"夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転" 第4話
踏み込んできた義母の欲
インターホンのモニターを確認すると、画面には派な毛皮のコートを着た義母のが映っていました。 私は呼吸をえ、玄関のドアをけました。
「お義母さん、いらっしゃいませ」
私が挨拶を言い切るよりもく、義母は私を肩で突きばすようにしてがり込んできました。
「ちょっと美桜さん! 迎えが遅いじゃないの!」
キツいの匂いを振りまきながら、義母は廊を品定めするように見回しました。
「達也から聞いたわよ。あの子、来から専務に就任するんですってねえ!」
義母は履き物を脱ぎ散らかすと、ずかずかとリビングの央へ入っていきました。 革張りソファの真んにどっかりと腰をろします。
「やっぱり達也は自の息子だわ。傾きかけた会社をでて直したんだもの!」
義母はの扇子をパタパタと仰ぎながら、をくして笑いました。
「専務ともなれば財界の顔よ。母親である私のだって、これまでとはまるで違うんだから!」
「お茶を淹れてまいりますね」
私が台所へ向かおうとすると、義母は鋭い声で制しました。
「お茶なんてでいいわよ! それより事な話があるの!」
義母はを組み直し、私を値踏みするように見つめました。
「達也が専務になった以、このの格も引きげなきゃいけないのよ。
広告
いうちに私の荷物を運び込ませるから、階の番広くて当たりのいい部を空けなさい」
突然の同居宣言に、私は息を呑みました。
「それにね、役員の母親として恥ずかしくない格好をしなきゃいけないんだから、毎のお遣いとして百万円を用してもらうわよ」
当然の権利だとでも言わんばかりの物言いに、私はを疑いました。
「……毎、百万円ですか?」
「当たりでしょう! 流企業の専務の母が、みすぼらしい格好でを歩けるわけないじゃない!」
義母はマニキュアを塗った爪を眺めながら、の悪い笑みを浮かべました。
「それからね、もうつなことがあるのよ」
義母は扇子をピシャリと閉じ、ガラステーブルを指先でく叩きました。
「美桜さん。あなたが持っているこのの通帳と印鑑、全部私に預けなさい」
信じられない求に、私は静かに線をげました。
「通帳と印鑑を……ですか?」
「そうよ! 自の持参もろくに持ってこなかった貧乏嫁に、専務のの財産を預けておけるわけないでしょう!」
義母はあざ笑うようにを鳴らしました。
「達也の稼ぎでこの豪邸にまわせてもらっているんだから、しはの程を弁えなさい。あの子が稼いできたおは、これからは母親である私が責任を持って管理するの!」
夫の会社を救ったのも、この億円の邸宅を買ったのも、すべて私の個資産でした。
広告
義母はその事実を何つらず、すべて息子の柄だと信じ切っているようでした。
私は背筋を伸ばし、静かに断りを告げました。
「申し訳ありませんが、通帳をお渡しすることはできません」
「……はあ?」
「計は私が責任を持って適切に管理しております。お義母様にお預けする理由はございません」
私の確な拒絶に、義母の眉が吊りがりました。
「姑の言いつけに逆らう気なの!?」
義母はちがり、扇子の先を私の先に突きつけてきました。
「達也が役員になったらね、あんたのなんていつでも吹きぶのよ! 役にたない嫁なんて、息子に言っていつでも追いしてもらうんだから!」
義母は激しく舌打ちをすると、肩をらせて玄関へと歩いていきました。 バタンと乱暴に扉が閉まり、のに再び静寂が戻ってきました。
夫が世を告げてから、まだしか経っていませんでした。 それなのに、義母はすでに私の財産をすべて奪う気満々で押し寄せてきたのです。
――の丈にわない権力をに入れた瞬、の奥底の醜い本性をむきしにする。
昨、父が言った通りの怪物が、くも姿を現していました。 もし父の言う通りに名義を移していなければ、今頃どうなっていたか分かりません。
私は父の底れない先見のに、背筋がぞっとするような戦慄を覚えていました。