"こぼされた定食の代償" 第6話
かされたとかぬ証拠
堂のがしんと静まり返っていた。
誰かが箸を落とす音すら聞こえそうな静寂の、神崎はきく見いた目を何度も瞬かせ、私と史の顔を何度も交互に見比べていた。
「つ、妻……? 専務の奥さん……? え、だって……堂の、配膳のおばさんじゃ……」
「失礼な言い方はやめていただけますか」
私はエプロンの紐を軽く直し、落ち着いた声で神崎を見据えた。
「私はこの会社に正社員として採用されています。調理師免許を持っているので現の厨も預かっていますが、材の発注管理や献の作成、コストの計算といった総務・管理事務も私の正規の業務です。勝にパートのおばさんだと決めつけて見していたのは、そちらでしょう」
「そ、そんなのるわけないだろ!」
神崎が額に青筋をてて喚いた。
「正社員だからって何なんだよ! 平社員の分際で、同じ正社員の俺たちをクビにする権限なんてあるわけねえだろ! 専務、こんな横暴が許されるんですか!?」
縋りつくような神崎の線を、史はややかに受け流した。
「彼女ので決めたわけではない。すでに今朝の役員会議で、君たちの懲戒解雇は正式に決議されている。辞令の類も、いま事部で作成だ」
「な……!」
今度はミキが鳴のような声をげた。
「な、なんでよ! が分からない! 私たちが何をしたっていうの!? ちょっと堂で答えしたくらいでクビなんて、当解雇よ! 労働基準監督署に訴えてやるわ!」
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「答え、ね」
私はカウンターのから、会社支の業務連絡用タブレットを取りし、画面をタップしての目のに差しした。
「じゃあ、これは何かしら?」
画面に映しされたのは、堂の広報用画を撮していたの鮮な映像だった。
そこには、配膳でトレーを受け取ったミキが「こんな物の餌、お払ってべる価値もない」と嘲笑い、来ての定をへぶちまける瞬が、音声付きでバッチリと記録されていた。さらに続いて、神崎が自分の定をで蹴り落とし、割れた陶器を踏みつける様子も、逃げのないアングルで残っていた。
「ひっ……!」
ミキがさく息を呑み、わずずさりした。
「な、何よこれ……盗撮じゃない! 訴えてやる!」
「盗撮ではありません。福利の広報画として、総務の許を得て定点カメラで撮していたものです。社内報に載せるための素材でしたが、まさかこんな器物損壊の現が撮れるとはっていませんでしたけれど」
私が淡々と告げると、神崎が青ざめた唇を震わせながらを挟んだ。
「だ、だが、これだけで解雇なんてすぎる! 弁償ならする! 定代も皿の代も払えばいいんだろ! 解雇事由には当たらないはずだ!」
必に法律の識を振りかざそうとする神崎に、史が静かに歩み寄った。
「器を割ったことだけが理由だとうかね? ……君たち、今朝の搬入のゴミのについて、何か言うことはないのか?」
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「ご、ゴミ……?」
ミキがすっと目を泳がせた。
「りませんよ! カラスが荒らしたんじゃないですか!? 防犯カメラだって今ついたばかりじゃない! 証拠もないくせに言いがかりをつけるのはやめて!」
「防犯カメラのデータだけが証拠だとっているなら、ずいぶん浅はかだな」
史が懐から自分のスマートフォンを取りし、画面をタップした。
「私のには、最のドライブレコーダーが搭載されていてね。夜でもくものをして画質で自録画する能があるんだ。……ほら、昨夜の午過ぎ、君たちがコンビニ袋を抱えて搬入のにち、を撒き散らして壁にスプレーを吹き付けている姿が、ナンバープレートまでくっきり映っているよ」
画面のでは、派なパーカーを着たミキと神崎が、まるでいたずらを成功させた子どものように笑いながらゴミをぶちまけていた。
「う……あ……」
神崎の喉から、掠れた空気の抜ける音が漏れた。
完全に言い逃れのできない決定な証拠のに、は幽霊でも見たかのように震えがり、そのにへたり込みそうになっていた。