"こぼされた定食の代償" 第5話
専務の背とクビ宣告
「あ、専務! 今はこちらで召しがるんですか? うちの堂、くて美しいんですよ〜!」
ミキの猫なで声が、静かなカウンターに響き渡った。
普段は「物の餌」「クソまずい」と罵り散らしていた女が、役員のではまるで敬虔な優良社員のように、両をで揃えて微笑んでいる。
隣につ神崎も、胸を張ってペコペコとをげていた。
「専務、頃から現の環境改善にご尽力いただき、本当にありがとうございます! 僕たち営業部の若も、専務のリーダーシップにはいつも銘を受けております!」
見え透いたゴマすりに、周囲の般社員たちはあからさまにドン引きしていたが、は専務にアピールすることだけに必で、周りの空気など切見えていないようだった。
「そうか。君たちもここで昼かね」
史はの読めない穏やかなトーンで返した。
「はい! 専務と同じ空で事ができるなんて栄です!」
ミキは満面の笑みでカウンターに向き直り、私に向かって声を張りげた。
「おばさん、替わり定つね! いつも美しいご飯をありがとうございまーす!」
神崎も笑顔を張り付けたままを乗りす。
「僕も替わりで! 忙しいところ悪いね、いつも謝してるよ!」
昨までに料理をぶちまけ、「ババア」「料棒」
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と罵っていたと同物とは到底えない、完璧なのひら返しだった。
厨の奥で、歩ちゃんが呆気にとられてをあんぐりとけている。
私は無言のまま、く替わり定をつトレーに並べた。そして、史の分の定も緒に用し、カウンターの向こう側へと運んだ。
「お待たせいたしました。替わり定つです」
私が目のにトレーを置くと、は専務の線を識しながら、いかにも謝しているを装って両をわせた。
「おばさんありがとう! 今もうまそうだな!」
「いつも難うございます! くて美しい最の堂だわ!」
が箸を取ろうと、トレーにを伸ばした——その瞬だった。
バンッ!!
私は両を、カウンターの板に力いっぱい叩きつけた。
鈍い破裂音が堂内に響き渡り、周囲の話し声がピタリと止まった。
神崎とミキが、目を丸くして固まる。
私は背筋をまっすぐに伸ばし、を射抜くように見据えながら、はっきりと告げた。
「——じゃあ、私からもお礼をつ」
堂の線が、私に集した。
私は元に徹な笑みを浮かべ、に向かって言い放った。
「君たち、今でクビね」
「……え?」
神崎とミキのから、抜けな声が同に漏れた。
が止まったような静寂の、ミキの引きつった顔が、見るみるうちにりで赤く染まっていった。
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「は……? あんた、今なんつった……?」
「聞こえなかったかしら? あなたたちは、本付で懲戒解雇。つまりクビよ」
私が畳み掛けるように宣告すると、神崎が背の専務を気にしながら、震える声で鳴り返してきた。
「ふ、ふざけるなよ! ただの堂のパートのおばさんが、正社員の俺たちをクビにできるわけねえだろ! 専務、こいつがおかしいですよ! 今すぐ警備員を呼んでつまみしてください!」
神崎が助けを求めるように振り返った、そのだった。
それまで黙ってろにっていた専務——史が、え切った目で神崎を見ろし、静かにをいた。
「彼女は嘘をついていないよ。……それと、神崎君」
史の声は、く、く、底れぬりを孕んでいた。
「私の妻を、堂のパートのおばさん呼ばわりするのは、輪際やめてもらおうか」
「……は?」
神崎の顎がれそうなくらいに落ち、ミキの顔からサーッと血の気が引いていくのが見えた。