"こぼされた定食の代償" 第2話
廊の衝突とかされた裏の顔
あの愉な昼休みからの朝。
私はメニュー表の差し替えと材の発注をバインダーに挟み、本館の管理フロアへ向かって歩いていた。
うちの会社は最、セキュリティ化のために各フロアの扉にICカード連のスマートロックを導入している。社員証をかざさなければかない仕組みになっており、類を保管する資料の周辺は、頃からの入りもない静かなエリアだった。
その資料のを通りかかった、まさにそのだった。
カチャリ、とい属音がしたかとうと、分い扉が勢いよく内側からへとねがったのだ。
「きゃっ!」
「うわっ!」
いた扉の角が私の肩を直撃し、わずよろめいて元のバインダーを取り落としそうになった。目のでは、資料からびしてきた女性社員が、に派に尻もちをついている。
「あ、危ない……! 丈夫ですか?」
私がとっさにを差し伸べると、に倒れていた女性は、弾かれたように顔をねげた。
「痛ったぁ……! 何よ、ちょっと! どこ見て歩いてるのよあんた!」
鳴り声をげてちがったのは、あの宮ミキだった。
首からげた社員証が、乱れた胸元で揺れている。ミキは私を見るなり、これ以ないほど骨に嫌悪を顔いっぱいに貼り付けた。
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「……何よ。堂のおばさんじゃない。邪魔しないでよ、鬱陶しい!」
「邪魔をしたわけではありません。あなたが急に扉をけてびしてきたんですよ。怪はありませんか?」
私が努めて静に問いかけると、ミキは「フン!」とを鳴らし、元に散らばった類の束を慌ててかき集め始めた。
「伝いますよ」
私が枚のプリントにを伸ばしかけた瞬——
パチンッ!
乾いたい音が、静かな廊に響き渡った。
ミキが私のを、平で力いっぱい払い除けたのだ。の甲にピリッとした痛みがる。
「触らないでよ! 汚いで!」
ミキは類を自分の胸に抱え込み、威嚇するように私を睨みつけた。
「これ、司から頼まれて運んでる営業の超類なの! 部者のパートのババアが見ていいものじゃないのよ! 変な垢でもつけられたら、あんたクビどころじゃ済まないんだからね!」
ババア——その剥きしの悪に、さすがの私もカチンときた。
「宮さん、言葉遣いには気をつけた方がいいですよ。いくら急いでいるからといって、社内のに向かってその態度は社会としてどうかといます」
「はぁ!? 何様よ! たかが堂で皿洗いしてるだけのくせに、正社員の私に説教する気!? の程をりなさいよ!」
ミキはヒールを激しく鳴らし、類を抱えたまま、度も謝ることなくにっていった。
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取り残された廊で、私は赤くなった自分のの甲を見つめながら、静かに息を吐いた。
何かがおかしい。
営業の類だと言っていたが、あんなに慌てて、周囲を警戒するように資料から持ちすものだろうか。それに、いくら気がい性格だとしても、あそこまで過剰に怯えたような剣幕で鳴り散らすのは、どこか自然だった。
もやもやとした違を抱えたまま堂の厨へ戻ると、歩ちゃんが仕込みのを止めて配そうに駆け寄ってきた。
「順子さん、どうしたんですか? なんか顔が優れないみたいですけど……」
「……実はね、さっき廊で営業の宮さんとぶつかっちゃって」
先ほどの来事をかいつまんで話すと、歩ちゃんの表がみるみる曇っていった。
「やっぱりあのだ……。順子さん、丈夫でしたか? 怪はありませんでした?」
「ええ、首をちょっと払われただけだから平気よ。でも、歩ちゃんも宮さんのこと、何かってるの?」
私が尋ねると、歩ちゃんは周囲のパートさんたちに聞こえないよう、し声を潜めて教えてくれた。
「実は……しの夕方、私がで退勤しようとした、駐ので宮さんとすれ違ったんです。その、いきなり呼び止められて……」
『パートさんはお気楽でいいわよねぇ。お昼過ぎには帰れて、した責任もなくて』 『あ、そういえば今の定、なんか付け変じゃなかった? あんたたち、覚音痴なんじゃないの?』
そんなない言葉を、嘲笑いながら投げつけられたのだという。
「私、悔しくて何も言い返せなくて……。でも、の部署のたちからも聞いたことがあるんです。あの——宮さんと神崎さんって、普段から自分たちのミスをに押し付けたり、派遣さんや清掃員のたちを見したりして、すごく評判が悪いらしくて」
歩ちゃんは俯きながら、ギュッとエプロンの裾を握りしめていた。
「懸命働いているたちを平気で傷つけるなんて、絶対に違ってます……」
「……そうね。歩ちゃん、教えてくれてありがとう」
私は歩ちゃんの肩を優しく叩いた。
ただの態度の悪い社員、というレベルではない。彼女たちのやっていることは、社内の空気を濁し、真面目に働く々の尊厳を踏みにじるらかなハラスメントだ。
このまま見過ごすわけにはいかない——私の胸ので、静かな決が固まり始めていた。