"「子なし」と笑われた私に、姪が吹雪の夜に土下座した" 第17話
消えない傷と寄り添う
けれど、受け続けたの傷は、そう簡単に消えるものではありませんでした。
しい活が始まってかほど経ったあるの夕暮れのことです。 台所で夕の支度をしていた私が、を滑らせてフライパンの蓋をに落としてしまいました。
ガッシャーン!!
甲い属音が、リビングに激しく響き渡りました。
「きゃあっ……!」
い鳴が聞こえ、私が慌てて振り返ると、リビングの隅で遊んでいたメイちゃんが、を抱えてうずくまっていました。 全を刻みに震わせ、歯の根がわないほどガタガタと震えています。
「メイちゃん!?」
私は慌てて駆け寄り、に膝をつきました。
「ごめんね、メイちゃん! 蓋を落としちゃっただけよ、丈夫!」
メイちゃんは両でをかばったまま、怯えた瞳で宙を見つめていました。
「ごめんなさい……ごめんなさい……! わたし、何もしてません……物を投げないで……!」
フラッシュバックでした。 かつて両親が壁に皿や器を投げつけて脅していた恐怖が、突然の物音によって鮮烈によみがえってしまったのです。
私の胸が、刃物で切り裂かれるように痛みました。
体についた傷はが経てば癒えます。 けれど、幼いに刻み込まれた恐怖の記憶は、こんなににを剥いて子どもを苦しめるのです。
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私はメイちゃんの震える体を、壊れ物を包むように優しく抱きしめました。
「丈夫よ、メイちゃん。誰も物を投げたりしないわ。ここは全よ」
その、玄関のドアがき、仕事から帰ってきた剛がび込んできました。 異様な空気を察した剛は、作業着のままに駆け寄ってきました。
「どうした、望!?」
「物音に……驚いちゃって……」
状況を理解した剛は、すぐにに座り込みました。 そして、自分のきな胸のに、メイちゃんをすっぽりと包み込んだのです。
「メイ、お父さんだぞ。怖かったな。すまんな」
剛の太い腕が、メイちゃんをしっかりと抱きしめました。
「丈夫だ。お父さんがいる。お母さんもいる。 おを怖がらせるものは、このにはつもねえんだよ」
剛の温かい体温と、力い臓の音が伝わったのでしょう。 メイちゃんは次第に体の張りを解き、剛の作業着の胸元をぎゅっと握りしめました。
そして、子どものように声をげて泣きじゃくりました。 溜め込んでいた恐怖を、すべて吐きすように。
私たちは何も、メイちゃんの背をさすり続けました。 焦る必はない。 何かかっても、何かかっても、この子が完全にできるまで、何度でも抱きしめ続けよう。
夫婦で交わした無言の約束が、静かな夜の部に満ちていました。