"赤ワインの余興" 第6話
砕け散った硝子の
井からり注ぐ肉声の余韻が途切れた瞬、宴会『鳳凰の』は、息をすることすら躊躇われるほどの完全な静寂に支配された。
仕のスタッフのからのトングが滑り落ち、絨毯のに鈍い音をてた。百名の招待客の誰もが、目を見いたまま壇の嫁を凝している。
命を救うための医療の現で、毒殺によって遺産を奪おうとしていた悪の告。
壇の真由美は、まるで幽霊でも見たかのように顎を刻みに震わせ、ち尽くしていた。その額には油汗がびっしりと浮きがり、真っ赤なを引いた唇が無様に歪んでいる。
主賓席では、郎の母が胸をく押さえながら、座席のに崩れ落ちそうになっていた。
「なんて……なんて恐ろしいことなの……」
母親の震える唇から、鳴にも似た掠れ声が漏れす。
その隣に座る赤松総の血管が、額と首筋に青々と張していた。老総の両は純のテーブルクロスを力任せに握りしめ、指先がく直している。
親族席では、達也が元を罠のように震わせ、泡を吹きそうな顔でちすくんでいた。
「ば、馬鹿な……真由美のやつ、なんてことをっているんだ……!」
義母のも目を剥きかけ、テーブルにしがみついて体を支えていた。
「嘘よ……そんなの、嘘に決まっているわ……!」
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私は膝ので、静かにスマートフォンの画面を操作した。音声を指先つで止させると、正面の巨スクリーンへ暗号化データを転送した。
スクリーンにプロジェクターの青いが斉に照射され、巨な文字が映しされた。
『録音:昨夜午分 伎町・級会員制クラブVIPルーム』
音声波形とともに、真由美がホストと密着してグラスを掲げる監カメラの静止画が、何枚も鮮に並んでいた。
言い逃れの余など、つとして残されていなかった。
客席のあちこちから、りと嫌悪に満ちた号ががった。
「結婚式の夜じゃないか!」「なんて浅ましい女だ!」「赤松の命と財産を奪うつもりだったのか!」「とんでもないペテン師だぞ!」
百名の招待客の線が、切っ先のような鋭さとなって壇の嫁へと突き刺さる。
親族席にいた郷田の親戚たちも、あまりの恐ろしさに蜘蛛の子を散らすように席をち始めた。
「おい、俺たちは何もらないぞ!」「達也、おたちの企みに巻き込むな!」「縁を切らせてもらう!」
々に罵倒を浴びせ、逃げるように会のへと退していく。
虚栄の絆で結ばれていたの結束は、瞬にして音をてて崩壊していった。
追い詰められた真由美は、狂ったように首を振り回した。マイクを両で力任せに握りしめ、を劈くような切り声を張りげた。
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「違う、違うわ! 皆様、騙されないで! これは最流りのAIで作られた偽造音声よ! 誰かが私を妬んで、悪を持って作った偽物に決まっています!」
真由美の目から粒の涙がボロボロと溢れ落ちていた。しかし、それは反省の涙ではなく、己の破滅を恐れる浅ましい恐怖の涙だった。
真由美は壇から必にを伸ばし、主賓席へ向かって叫んだ。
「お義父様、お義母様、信じてください! 私はそんな恐ろしいこと、これっぽっちも考えていません! 私は修平さんをからしているんです!」
見苦しい言い訳を並べてながら、真由美は隣につ郎の修平さんへ縋り付こうとした。
ドレスの裾を自らので踏みつけ、よろめきながら夫のタキシードの袖を掴んだ。
「修平さん、お願いだから信じて……! 私を見て、あなたの真由美をしてるって言ってくれたじゃない! 私たちは夫婦になるのよ!」
真由美の震える指先が修平さんの腕に触れた、その瞬だった。
バチンッ!
乾いた激しい破裂音が、静まり返った砂席に響き渡った。
郎の修平さんが、全の力を込めて、その差し伸べられたを払いのけたのだ。