"金髪の女子高生に、娘が「ねえね」と手を伸ばした" 第2話
うさぎの持ち主
次に会ったのは、3の夕方だった。
「あ、つむちゃん」
コンビニの入で声をかけられ、紬が俺のを引いた。凛はひとりで、パックの茶をんでいた。今は髪をろで結んでいる。
「りんねえね」
「覚えてたんだ。すごくない?」
俺に同を求めるので、し笑ってしまった。
「帰ってからも、何度か名を言ってました」
「へえ」
素っ気ない返事のあと、彼女はストローをくわえ損ねた。
内へ入ると、紬はお菓子の棚のでしゃがみ込んだ。いつものさなせんべいを選び、レジまで自分で運ぶ。俺が支払いを済ませているに、へようとして凛に止められた。
「パパ待ち。ひとりでたらだめ」
紬はきちんとち止まった。では俺が同じことを3回言っても聞かないがあるのに。
の脇まで来たところで袋をけてやると、凛が「あ、端っこ」と言った。切り取った細い包装が、せんべいに貼りついている。
「ほんとだ。ありがとうございます」
「うち、いとこがさかったから。こういうのに入れようとすんだよね」
紬のから包装を受け取り、彼女はすぐそばのごみ箱に捨てた。
そのあとも、買い物の帰りに何度か顔をわせた。
凛は18歳で、3だという。卒業したらどうするのか聞くと、「まだ」とだけ答えた。こちらも聞かれたので、26歳で、で絵を描く仕事をしていると話した。
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「絵って、漫画?」
「本の表とか、児童の挿絵とか。漫画は描けないです」
「へえ。本に載るんだ」
そのは、いつもより返事が遅かった。
帰るころに同じ制の子が通りかかり、凛に声をかけた。
「今も午いなかったじゃん。先、のせって」
「分かってる」
「分かってるって、先週も言ってたし」
「すから。もういいって」
急にくなった声に、紬が俺のズボンをつかんだ。凛はそれに気づくとを閉じた。相の子は気まずそうに会釈をして、駅へ向かっていった。
俺も何も聞かなかった。
に帰ると、机には修正待ちのラフが3枚残っていた。紬を寝かせてから取りかかるつもりが、添い寝のまま眠ってしまい、気づいたときには付が変わっていた。
顔を洗い、机のライトをつける。片隅の写真てには、まれたばかりの紬を抱く帆がいた。
妻がくなって18かになる。写真のの娘は、まだ目もろくにけていない。今、俺のを振りほどいて菓子売りへ歩いていった子と、同じ子なのが議だった。
数、仕事の打ちわせが引き、いつもより遅くへ寄った。母に頼まれた牛乳を買うだけのつもりだったが、紬はで凛を見つけると直線にづいていった。
「みみも、きた」
「お、今も緒なんだ」
凛がうさぎのを指でなでた。紬は縫ってあるを広げて見せ、得そうに「パパ、した」
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と言う。
「直したの? すごいじゃん」
「見ないでください。初めて縫ったんで」
「でも取れてないし」
そう言って、彼女は縫い目を引っ張らないようにを戻した。
「ほかのは持ってこないよね。これがいちばん好き?」
「うん。ママの」
凛の指が止まった。
紬は「ママ、くれた」と続けた。俺たちが写真を見せながら何度も話したので、その言葉だけはよく覚えている。
「奥さん、今仕事?」
凛は俺の顔を見てから、さく「あ」と言った。
答えを待っている彼女ので、俺は買い物袋の持ちを掛け直した。
「くなったんです。紬がまれて、ししてから」
蔵ケースのい音が、自ドアの向こうから聞こえた。
「……ごめん」
「いえ。らないんだから」
凛はうさぎを見たまま、しばらく黙っていた。紬がそのの甲をつつくと、ようやく顔をげた。
「そっか。じゃあ、落とさないようにしないとな」
うさぎを持つ紬の腕に、自分のをそっと添えた。