"役立たずの僕が、上司を救った夜" 第3話
父が残した頼み事
「話なら、ここでも聞けます」
健太が答えると、の男は写真を引っ込めた。
「ごもっともです。の朝、そこのホテルの喫茶ではどうでしょう。20分で構いません」
渡された名刺には、黒崎源司とあった。健太は携帯をし、凛へ連絡した。父親のを名乗る男に声をかけられたこと、写真を見せられたことをき、会うにらせておきたいと付け加えた。
返信はすぐに来た。
〈私は会いたくありません。でも、話を聞くなら、あとでそのまま教えてください〉
健太はその文を読み返してから、黒崎へ頷いた。
翌朝8、喫茶には勤らしい客が数いた。黒崎はで座り、健太が席につくとをげた。
「まず、うちの者がしたことをお詫びします。鳥さんにも直接、謝らせてほしい」
「会いたくないそうです」
「……そうでしょうな」
黒崎はコーヒーにをつけず、昨夜の写真をテーブルへ置いた。
「私は龍玄組の黒崎です。あのの父親には、命を拾ってもらいました」
25、まだ若かった黒崎は、揉め事の末に腹を刺され、で倒れていた。通りかかったがを速める、だけ戻ってきた男がいた。
品を配達していた鳥誠だった。
誠は救急を呼び、持っていたタオルで傷を押さえた。黒崎がを汚すかられろと言っても、をどけなかった。
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「俺が誰だか、わかってんのかって聞いたんです」
黒崎は写真の端に指を置いた。
「そしたら、らないよ、と。けど、放っといたらぬんだろうって」
退院、礼に持っていったは受け取ってもらえなかった。その代わり、誠の先で缶コーヒーを本渡された。
それからは、たまに顔をしても、仕事の話を持ち込まないことが条件だったという。
「配達を伝うと言っても、客が怖がるからやめろと。頼まれたのは、先の鉢植えを度運んだくらいです」
「いいだった、で終わる話なら、娘さんを追い回す必はありませんよね」
健太が言うと、黒崎は頷いた。
「入院したときに、度だけ呼ばれました」
病で誠は、娘が会社で課になったと話した。仕事のできる子だが、できないと言うのは昔から苦なのだと笑った。
そして帰り際、黒崎を呼び止めた。
自分がいなくなって、あの子が本当に困ったら、話だけでも聞いてやってほしい。
「ただし、俺の名を使って、何かさせようとうなよ。そうを押されました」
黒崎はそこで、ようやくカップを持った。けれどまずに、また受け皿へ戻した。
「見てるだけのつもりでした。ところが最、妙な話がに入った。娘さんを会社からすために、うちとの付きいがあることにしたい連がいる、と」
健太は黒崎の顔を見た。
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「誰から聞いたんですか」
「い付きいのの主です。そんな仕事を持ちかけている男がいると、配してらせてくれた」
「それで組のを向かわせたんですか」
黒崎は黙った。
「その噂が本当なら、あなたたちが囲んだこと自体、相に利用されます」
窓際から朝のが差していた。黒崎は写真を伏せ、両を膝へろした。
「守るつもりで、追い込んだわけか」
健太は慰めなかった。昨夜、凛の首に残った赤い跡をいしていた。
「これからは本が望むまで、づかないでください。確かな話があるなら、どころも含めて渡してほしい。信じるかどうかは、鳥課が決めます」
「わかりました」
20分になろうとしていた。健太がちがると、黒崎は最につだけ、と顔をげた。
「その男がにしていた名があります。榊原という専務です」
健太は名刺を財布へしまった。
会社へ着くと、会議の扉がいていた。から凛の声がした。
「確認できない以、私の名では承認できません」
向かいに座る榊原専務の元には、赤い付箋を貼った類があった。