"年収三千万円の嘘" 第3話
私はもう黙らない
「だから浮気じゃないって何回言えば分かるんだよ!」
康太は逆し、リビングのテーブルを掌で叩いた。
「俺は健太のサッカーのために毎をげて、親同士の付きいを円滑にするためにいてるんだ! 仕事にかまけてクラブの役員会にも顔をさないおが、現の苦労もらないで偉そうにを挟むな!」
「子どもたちをファミレスに何も置きりにして密会することが、クラブの付きいなの?」
「げさに騒ぐなよ! たかがファミレスの内にいただろ! 何か事件でも起きたか? 無事に帰ってきたんだから文句言うな!」
「その、はどこで何をしていたの」
「買いしだって言ってるだろ! 領収でも見せろってのかよ!」
康太の濁った瞳を見つめながら、私はこれ以何を問いただしても、見苦しい自己弁護と逆ギレが返ってくるだけだと理解した。
医師として々、患者の命や族のの局面にち会っている私にとって、この男の底の浅い嘘に付きうは、あまりに無で毛だった。
「……分かったわ。もういい」
私はそれ以追及することをやめ、健太の待つ寝へと引きげた。
背で康太が「分かればいいんだよ、くだらない言いがかりつけやがって」と吐き捨てる声が聞こえた。
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彼はどうやら、私が言いくるめられて引きがったのだと都よく解釈したらしかった。
数の曜、私は当直けのい体を押して、久しぶりにサッカークラブの試会へとを運んだ。
これまでは「夫に任せてあるから」と慮していた保護者の輪だったが、試のに数の母親たちが、私の顔を見るなり気遣わしげに駆け寄ってきた。
「まりなさん、今はお仕事お休みだったんですか? お疲れ様です」
「ええ、今はどうしても健太のプレーが見たくて。いつもお世話になってます」
世話を交わすうちに、以から役員を緒にやっていた親しい母親が、周囲を窺いながら声を潜めてきた。
「……あのね、まりなさん。余計なお世話かもしれないんだけど……康太さんと美さんのこと、ってる?」
「え……?」
「やっぱり気づいてなかったんだ。最ね、子どもたちの試なのに、が示しわせたように連れってでどこかへ消えちゃうことが何度もあって……。周りの保護者もみんな、目のやりに困ってヒソヒソ噂してるのよ」
私だけがらなかったのではない。
当事者のが「く隠せている」とい込んでいただけで、周囲のたちにはとっくにその健全な距が筒抜けになっていたのだ。
「まりなさん、本当に丈夫なの? 旦さん、ではなんて言ってるの?」
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配そうに見つめてくる母親たちの真っ直ぐな線に、私はこれ以、夫婦の体面を取り繕うを見せなくなった。
「……実は、夜に美さんを自宅に連れ込もうとした現を押さえたこともあります。先は、子どもたちをファミレスに残してで消えていたこともありました。夫を問い詰めても、『ただの役員の相談だ、浮気じゃない』の点張りで……」
私はにならず、起きた事実だけを淡々と客観に話した。
告げをするつもりも、悪評を広めるつもりもなかった。ただ、健太がお世話になっているコミュニティに対して、嘘をついて誤魔化し続けることが耐えられなかったのだ。
そののうちに、保護者ネットワークを通じて話は気に広まった。
これまでものあからさまな抜けしに眉をひそめていた保護者たちがかっただけに、「子どもをしに使って放置していた」という決定な事実は、親たちのりにをつけた。
試終、数名の役員が美と康太を呼びし、「子どものためのクラブで、そういう無責任なをするのはやめてほしい」と厳に注を申し入れたらしい。
そのの夜、私の自宅のインターホンが激しく連打された。
ドアスコープを覗くと、りで顔を真っ赤にした康太と、そのろで腕を組み、眉を吊りげた美がっていた。
ドアをけた瞬、康太が号を浴びせてきた。
「まりな! お、保護者の連に何吹き込んだんだよ!」
美も尖ったヒールを鳴らしながら、ずけずけと玄関先へ踏み込んできた。
「信じられない! 私たちが倫してるなんてデマ流して、みんなので恥をかかせてくれたじゃない! 彩や健太君がクラブにいづらくなったらどう責任取るつもりなのよ!」
私はの見苦しい剣幕をややかに見据え、歩も引かずに言い放った。
「デマ? 夜のにでうちに来たのも、ファミレスに子どもたちを置きりにして消えたのも、すべて事実でしょう。私は聞かれたから、起きた事実をそのまま答えただけよ」
「だからってにペラペラ喋る必ないだろ!」
「都の悪い事実をられて困るのは、あなたたち自のにやましいところがあるからじゃないの?」
がぐうの音もずに言葉を詰まらせた。
「健太も彩ちゃんも関係ないわ。保護者の皆さんは、子どもたちを責めるような狭量なたちじゃない。軽蔑されているのは、子どもを隠れ蓑にして勝な逢瀬を繰り返していた、あなたたちよ」
康太の顔が屈辱で歪んだ。
「お……稼いでるからって調子に乗りやがって。昔はもっと素直でしかったのに、本当に性格悪くなったな!」
その見当違いな罵倒を聞いた瞬、私ののにあった最の迷いが、完全に消えった。
「そうね。あなたの言う通り、私はもうするのをやめたのよ。――康太、婚しましょう」
「……は?」
「に言ったはずよ。次に同じことをしたら婚するって。今すぐてって」
美が瞬呆気にとられたように目を見張ったが、次の瞬、勝ち誇ったような笑みを浮かべて康太の腕に自らの体をすり寄せた。
「いいじゃない、康太くん! こんな血な女、こっちから願いげよ! さっさと婚して、私と緒になりましょ!」
その滑稽な茶番劇を見つめながら、私の唇からはたい失笑が漏れた。
「何もない関係」だと喚いていた舌の根も乾かぬうちに、妻の目ので再婚宣言とは。
「ええ、賛成よ。、役所から婚届を取ってくるわね」