"「姉の足を折る」と笑った地元の顔役――7年ぶりに帰った“工場勤務”の弟を見下したが、彼の本当の勤務先を知った時にはもう遅い" 第5話
姉が放したもの
いは、俺たちがをるまで肩に止まっていた。
運転席の男は話を切ると、隠す気もなくこちらへカメラを向けた。森川が自分のカメラで両とナンバーを撮ると、男は舌打ちし、急発してっていった。
「今のも田興産ですね」
「ええ。こちらが誰と会い、何を調べたか報告する役でしょう」
森川は監映像を2本の記録媒体へ移し、方を事務所の耐庫、もう方を県の共同事務所へ送る配をした。クラウドの原本には保と操作履歴が残る。これでをもう度荒らされても、映像までは消せない。
向かいのクリーニングは休業だった。入の話番号へ連絡すると、主の田は最初、の映像提供を断った。
「悪いけど、うちは関わりたくないんです。子供もいるんで」
当然の反応だった。正義だけで族を危険にさらせとは言えない。
森川が、映像の無だけ確認し、提の判断は警察から正式な照会が来てからでもいいと説した。すると田はく黙った、翌朝ならドライブレコーダーを確認すると約束してくれた。
病院へ戻ると、由美子は母の事を伝っていた。監映像のことを話しても、ぶどころか箸を置いた。
「それを警察にしたら、田はもっとるでしょう」
「だから、ったに何をするかまで考えておく」
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「健は分かってない。あのたちは、普通の理屈で止まらないの」
姉の声がくなる。母がそうに俺たちを見たため、俺は話を切りげた。
夕方、由美子が着替えを取りに帰った、母が枕元の引きしからさな布包みをした。
「これ、健に渡しておくよ」
に入っていたのは、父が使っていたの腕計だった。文字盤には細かな傷があり、革のベルトだけがしくなっている。
「処分したんじゃなかったのか」
「由美子が質に入れたんだよ。あんたが入隊する、をる支度におがかかっただろう」
俺は何も答えられなかった。
当、俺は姉から渡された4万円で靴と鞄を買った。姉はの売が良かったからと言っていたが、その、里堂は3か続けて赤字だったという。
「あの子、朝4からをけて、夜はスーパーの清掃にってた。それでもりなくて、お父さんの計を放したんだ。5かけてしずつおを貯め、やっと買い戻した」
計の針は止まっていた。それでも裏蓋を指でなぞると、父が毎朝これを着けて勤していた姿をいした。
俺はを守るためにていったつもりだった。だが実際には、姉に父の形見まで放させ、7も帰らなかった。
病をたところで、由美子と鉢わせた。俺のにある計を見ると、姉は母が話したことを悟ったらしい。
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「返して。まだ修理が終わってないから」
「どうして何も言わなかった」
「言ったら、あんたは靴も鞄も買わなかったでしょう」
「当たりだ」
「だから言わなかったの」
由美子は計を受け取らず、俺の指を閉じさせた。
「くなったなら、殴る以の守り方を選びなさい。お父さんの計を持って、警察に捕まるようなことだけはしないで」
その夜、田から森川へ連絡が入った。ドライブレコーダーには、田がので部へ指示をす姿が映っていた。音声はない。だが1405分、田が内を指さし、7が斉に入っていく流れは瞭だった。
さらに映像の端には、峰署の公用が映っていた。
通報を受けた警察官は、が壊される12分に現くを通っていたのである。
公用は交差点で度減速し、のへ向かう田のワゴンとすれ違っていた。それでも現へ戻った記録はない。偶然見落としたのか、図にれたのか。映像はしい疑問を突きつけていた。
森川は該当箇所だけを別にきし、両番号と刻を記録した。