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"娘の披露宴に新郎側が全員欠席――清掃員の夫が動いた" 第5話

引き裂かれた族写真

顔わせのの苦い記憶を引きずりながらも、季節は初へと移り変わっていきました。

の曜、披宴の第回打ちわせのため、私と紗良はホテル清澄を訪れました。 夫はその、きな商業ビルの定期清掃が入っていたため、来ることができませんでした。

ホテルのロビーに入ると、理のが窓からのを浴びて、滑らかに輝いていました。 若い頃の夫が、夜に汗を流して磨いていたです。 そううと、私にはどんな豪華な調度品よりも、そのが誇らしく見えました。

ウェディングプランナーの宮園さんは、物腰の柔らかな落ち着いた女性でした。 親になって相談に乗ってくれ、紗良の表もようやくるさを取り戻していました。

打ちわせで、披宴の途にスクリーンで流す「いちスライド」の写真を選んでいたのことです。

「あら、もう始まってらしたの?」

ノックもそこそこに、部の扉がきました。 現れたのは、のスーツを着た佳代子さんでした。 そのろから、申し訳なさそうな顔をした尚弥さんがついてきます。

「母さんが、どうしてもドレスや演の相談にち会いたいって言うから……」 尚弥さんが声で紗良に謝りましたが、佳代子さんはすでにテーブルのに陣取っていました。

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「さあ、見せていただこうかしら」 佳代子さんはテーブルに並べられた写真を、指先で枚ずつめくっていきました。 そして、ある枚の写真ので、ピタリと指を止めたのです。

それは、私が番気に入っている写真でした。 紗良がまれた、産院に駆けつけた夫が、作業着のまままれたばかりの紗良を腕に抱いて泣いている写真でした。 胸元の「相」の刺繍ので、赤ん坊の紗良がして眠っています。

「……これ、しましょう」 佳代子さんが、たく言い放ちました。

「えっ……どうしてですか?」 紗良が顔をげました。

「どうしてって、作業着じゃないの。当はうちの取引先の社さん方も勢いらっしゃるのよ? わざわざこんな汚れた格好の写真を、皆様にお見せする必なんてないでしょう」

佳代子さんはそう言うと、写真を裏返し、テーブルの端へと弾くように追いやりました。 まるで、触るのも汚らわしいと言わんばかりの仕でした。

「それから、司会者さんにお渡しする婦のプロフィール原稿もね。 お父様のお仕事のところ、『会社員』とだけ濁しておいてくださるかしら」

プランナーの宮園さんのが、ピタリと止まりました。 「お父様のご紹介につきましては、郎婦おのお気持ちを最優先に……」

「ええ、だから相談しているのよ」 佳代子さんは宮園さんの言葉を遮り、笑を浮かべました。

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「清掃員なんて正確に言って、誰が得をするの? 言わなくていい恥は、隠すのが常識でしょう?」

その瞬、紗良が子を引いてちがりました。

「お言葉ですが」 紗良の声は、決してきくありませんでしたが、凛として震えていませんでした。

「私は、父の仕事を恥ずかしいとったことは度もありません。 父は毎朝に起きて、誰も見ていないところでをピカピカに磨いて、私を育ててくれました。 この写真も、プロフィールも、絶対に削りません」

佳代子さんの眉が、そうにねがりました。 「まあ……善でアドバイスしてあげているのに、気な子ね」

助けを求めるように、紗良が尚弥さんを見つめました。 けれど、尚弥さんは母親の顔をうかがい、線を泳がせるばかりでした。

「母さん……まあ、紗良の好きなようにさせてやれば……」 消え入りそうな声で尚弥さんが呟くと、佳代子さんは満そうにを鳴らしました。

打ちわせが終わり、化粧ので佳代子さんは私を待ち伏せしていました。

「眞壁さん。あなたのお宅には、の程というものが分からないのかしら。 親子代で会社を経営してきたうちと、ただの清掃員の。 本来なら、お付きいすることすらあり得ない柄なのよ」

吐き捨てるようにそう告げると、彼女は級なバッグを揺らしてっていきました。

悔しさに震えながら帰宅した私を待っていたのは、居で黙々と古聞を束ねている夫の姿でした。 作業着を脱ぎ、穏やかな顔でお茶をむ夫の横顔を見つめながら、私は胸が張り裂けそうでした。

なぜ、このがここまで侮辱されなければならないのか。 真面目に、誠実にきてきたが、なぜ見されなければならないのか。

けれど、夫の携帯話が鳴ったのは、そのの夜のことでした。 寝を抜けした夫が、勝の暗がりで誰かと話している声が、静まり返ったに漏れ聞こえてきたのです。

『……ああ、俺だ。条か? 夜分にすまないな』

条? 聞いたこともない名でした。 夫は普段の訥々とした話し方とは打って変わり、驚くほどく、引き締まった声で告げたのです。

『――桧設備の件だ。……あの会社に対する俺の推薦、今すぐに戻してくれ』

推薦? ? 夫は体、誰に、何の話をしているのか。 のに浮かぶ夫の横顔は、私のる「いつものお父さん」とは、まるで別の徹さを宿していました。

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