"娘の披露宴に新郎側が全員欠席――清掃員の夫が動いた" 第4話
料亭の座敷と、え切った線
の終わり、両の顔わせがわれることになりました。 所は、尚弥さんの父親が指定した駅の老舗料亭でした。
「ちゃんとした、あったかな」 夫は普段着ない押し入れの奥から、数に紗良の成式で着た紺のジャケットを引っ張りしてきました。 し肩のあたりが窮屈そうでしたが、靴だけは夜から入りに磨きげていました。
の曜。 料亭の座敷に入ると、桧のたちがすでにのに背を向けて座っていました。
「桧設備の代表をしております、桧俊彦です」 恰幅のいい代の男性が、威圧のある声でちがりました。 撫で付けた髪に、仕ての良さそうなグレーのつ揃え。 差しされた名刺には、誇らしげに代表取締役の肩きが刷られていました。
その隣で、の訪問着を着た女性が、さく会釈をしました。 母親の佳代子さんでした。 胸元には粒の真珠のブローチがっています。
「紗良さん、お写真よりずっとらしい方ね」 佳代子さんは微笑みましたが、その線は紗良の毛先から元のバッグまでを、品定めするように素く往復していました。
席に着き、運ばれてきた料理をに、最初の分は俊彦さんの独壇でした。
「うちは創業になりましてね。
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空調と排設備本で、ここまで会社をきくしてきました。社員は。ホテルや病院の設備を任せていただいてます」
「ご派ですね」 私が相槌を打つと、俊彦さんは満そうに頷きました。
「実は今、全国の型施設を管理している超企業さんと、きな話がんでおりましてね。これが決まれば、売は気にねがりますよ。尚弥の代には、会社を倍の規模にしてやれます」
「父さん、その話はまだ社秘なんだから……」 尚弥さんが声で窘めましたが、俊彦さんはに介しません。
「内になるんだ、構わんだろ」 そう言ってビールをみ干すと、俊彦さんは線を夫へと向けました。
「ところで、お父様はどちらにお勤めで?」
座敷の空気が、瞬だけ止まりました。 夫は箸を静かに置き、背筋を伸ばして答えました。
「清掃の仕事をしております。相ビルサービスという会社で、オフィスビルやホテルのを磨いています」
その瞬でした。 佳代子さんの顔から、貼り付けたような笑みがスッと消え失せました。 元は微笑の形を保ったまま、目だけが氷のようにたくなったのです。
「まあ……お掃除の」 佳代子さんは元の扇子で元を隠しました。
「体力のいるお仕事ですこと。若い頃からずっと、それを?」
「はい、のからずっと現におります」
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夫が淡々と答えると、佳代子さんはげさに目を丸くしました。
「まあ、まあ……」 それ以、佳代子さんは何も言いませんでした。 けれど、運ばれてきたお椀の蓋をけ、懐で蓋の裏のを拭うそのつきは、まるで汚れたものを拭いるかのようにややかでした。
尚弥さんは居悪そうに線を落とし、母親の横顔をチラリと見たきり、固まっていました。 彼が今まで夫の仕事を親に言えなかった理由が、痛いほど理解できました。
俊彦さんがわざとらしく咳払いをし、話を逸らしました。 「お母様もお勤めを?」 「はい、印刷会社で事務をしております」 「なるほど、共働きですか。それは変だ」
変、という言葉に、隠しきれない優越が滲んでいました。 佳代子さんが、今度は紗良に向き直りました。
「紗良さんのご実は、持ちですの?」 「はい、古の戸建てですけれど」 紗良が正直に答えると、佳代子さんはさく首を傾げました。
「そう……」
それだけ言って、佳代子さんは度と実の話題に触れませんでした。 テーブルので、紗良が膝ののハンカチをギュッと握りしめているのが見えました。 私の喉元までりの言葉がかかりましたが、娘の顔わせの席を壊すわけにはいかず、必でみ込みました。
その苦しい空気を破ったのは、夫の穏やかな声でした。
「誰かが綺麗にしないと、誰も気持ちよく使えませんからね。誇りを持ってやっていますよ」
佳代子さんは返事をせず、ただ湯呑みに線を落としました。 事の、式の取りが、会は紗良の希望で「ホテル清澄」に決まりました。
会計を済ませた廊で、佳代子さんときりになった瞬、元でたい囁きがってきました。
「うちは跡取りのですから、々とね。釣りいというものがありますでしょう?」
背筋に、たいが落ちたような覚がりました。 このたちにとって、娘はのではなく、「清掃員のの娘」という値札を貼られたでしかなかったのです。