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"母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景" 第9話

と誇りの契約

直売所の奥にある会議には、の静かな駆音だけが響いていた。

机の片側には、このでを耕し続けてきたの産者代表が、作業着のまま背筋を伸ばして腰掛けていた。彼らの顔には、幾もの焼けとい皺が刻まれ、厳しい自然と向きってきた者だけが持つ、静かな威厳が漂っていた。

その向かい側に、の会社で仕入れ部を束ねる初老の司が、たったで座っていた。

ドアがき、奈津美が入すると、司は弾かれたようにちがり、々とをげた。

「黒田代表、先ほどは私どもの元社員……いえ、現課の庭の際で、なご迷惑をおかけしました。よりお詫び申しげます」

奈津美は軽く会釈をし、産者側の末席に腰をろした。

「お気遣い痛み入ります。ですが、の来事は今回の商談とは切無関係です。私たちは、ビジネスの話をするためにここに集まりました」

奈津美の凛とした言葉に、代のベテラン農がく頷いた。

「さて、部さん。速だが、で送ったしい契約条件について、そちらの返事を聞かせてもらおうか」

農のい声が、静まり返った部に落ちる。

司は元の分いファイルをゆっくりといた。そこには、奈津美が過数ヶにわたって精緻に弾きした、燃料代、肥料代、段ボールなどの包装資材の騰を示す客観なデータがぎっしりとファイリングされていた。

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「率直に申しげます」

司は背筋を正し、農たちを真っ直ぐに見据えた。

「弊社といたしましては、黒田代表からご提示いただいたしい買取り価格、および支払い条件を、全面に受け入れさせていただきたくじます」

会議の空気が、微かに揺れた。

農たちが顔を見わせる。買い叩きや幅な値引き交渉を仕掛けてくるものと構えていた彼らにとって、それは拍子抜けするほどの完全な受託だった。

「良いのかい? これまでの価格より、割以い設定だぞ」

代の女性農が尋ねると、司は苦渋に満ちた表を浮かべながらも、はっきりと答えた。

「この数ヶ、当社の現のが県の産をいくつも回り、代わりの野菜を探しました。しかし、御社が納品してくださるミニトマトやハーブのような、圧倒な鮮度といわいを持つ作物は、どこを探しても見つからなかったのです」

司は奈津美の方へ線を向けた。

「形が揃いであっても、朝摘みの最の状態で届き、厨での調理程にわせた規格で仕分けられている。この品質があるからこそ、当社の板メニューは成りっていました。……それを、当社の川が『妻の実だからく買い叩いて当然だ』と驕りぶり、現の危を放置していた。すべては弊社の怠です」

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司は再びちがり、農たちに向かってをげた。

「お願いです。全量独占の解除は受け入れます。ただ、最限、当社の舗が必とするの最荷数量だけは、どうか確保していただけないでしょうか。適正な価格はお支払いいたします」

部のに、い沈黙が流れた。

、がこのにやってきた、農たちは「買ってもらう側」として、理尽な値を泣く泣く受け入れるしかなかった。

だが今、は完全に逆転していた。

にまみれ、恵を絞り、品質を磨きげてきた者たちが、都会の企業からをげられ、請われるになったのだ。

農の代表が、ゆっくりとペンをに取った。

「……分かった。あんたがそこまで言うなら、俺たちもを張るつもりはない。良い野菜を届けるよ。ただし、約束の期までにきっちり代を振り込むこと。それが条件だ」

「ありがとうございます……! 決してご期待は裏切りません!」

契約の末尾に、双方が署名と捺印を交わす。

カチャリと印鑑が置かれた瞬、対等で、公正なしいパートナーシップが結ばれた。

誰かに依するのでもなく、誰かを支配するのでもない。

自らのでち、自らの仕事に誇りを持つ者同士の、本物の取引だった。

会議が終わり、司を見送った、夕暮れに染まる直売所の裏で、農たちが奈津美の肩を叩いた。

「奈津美ちゃん、やったな」

「ええ……皆さん、本当にお疲れ様でした」

赤く染まる空の、連なるビニールハウスが夕に照らされてに輝いていた。

の苦しみも、理尽な蔑みも、この瞬のためにあったのだとえるほど、奈津美の胸のには、清々しいが吹き抜けていた。

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