"母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景" 第6話
剥がれ落ちた仮面
蝉の鳴き声がけたたましくり注ぐ、直売所の駐。
照り返すアスファルトので、義母の幸恵は傘を握りしめたまま、彫像のように固まっていた。
目ので起きていることが、どうしても理解できなかった。
息子が勤めるチェーンの社用からりてきた初老の役が、作業着に靴姿の元嫁——奈津美に向かって、腰が折れそうなほどくをげているのだ。
「黒田代表、本は急な申し入れにもかかわらず、貴なおをいただきより謝申しげます」
役のく響く声は、駐に届くほど瞭だった。
奈津美は元の伝票を若いスタッフに渡すと、汗を拭いながら落ち着いた所作でをげ返した。
「お疲れ様です。本の価格交渉につきましては、事に申しげました通り、私個は採決には加わりません。産者代表の農名が同席いたしますので、そちらと詰めていただく形になります」
「ええ、承しております。黒田代表は当社の川課と元ご夫婦ですから、利益相反の疑を避けるためのご配慮ですね。その公正な姿勢にく敬を表します」
役の言葉のつひとつが、幸恵の鼓膜を激しく揺さぶった。
黒田代表。利益相反。公正な姿勢。
幸恵ののにあった「都会から逃げ帰り、ビニールハウスので飢えと寒さに震える惨めな女」
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という像が、激しい音をてて砕け散っていく。
そこにいたのは、にまみれて泣き暮らす落ちこぼれなどではなかった。
件もの農を束ね、企業の役を相に対等に渡りう、派な共同会社の代表者だったのだ。
幸恵が震える唇をわななかせていると、台目のからりてきた息子のが、霊でも見たかのように目を丸くしてち尽くしていた。
「か……母さん? なんで、母さんがここにいるんだよ……!?」
掠れたの声に、幸恵はすがるように駆け寄った。
「! これ、どういうことなの!? あんた、仕事でこの辺に来るって言ってたじゃない! 奈津美さんの実が困っているから、また助けてあげるために来たんじゃないの!?」
必に自らの「都の良い物語」にしがみつこうとする母親の問いかけに、の顔は見るも無残に歪んだ。
「助ける……? 違うよ、母さん。俺たちが、頼み込みに来たんだよ」
「は……? 頼み込むって、何を……? だって、うちの会社が買い取ってあげてたんでしょう? この子たちの野菜を、あんたが引きててあげてたんじゃないの!」
「違うんだってば!」
が喉の奥から絞りすように叫んだ。その声は裏返り、けなく駐に響いた。
「最初に販を作ったのも、規格の野菜を買い取る仕組みを考えたのも、全部奈津美なんだよ! 俺はただ、社内でそれを自分の柄みたいに見せてただけだ!」
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「嘘……そんなの、嘘でしょ……? お正に親戚ので、あんたは『田舎の農を面倒見てやってる』って言ったじゃない! みんなので、そう言って笑ってたじゃないの!」
「母さんがそうってくれるのが、気持ちよかったんだよ!」
は両で顔を覆い、みっともなく蹲りそうになりながら、自らの恥部をぶちまけた。
「妻の実を見して、自分が恵んでやってるってわれるのが……楽だったんだよ! 俺の力じゃなかったんだ! 奈津美がいなくなって、原価が騰して、契約を見直さなきゃ会社がちかなくなるってに、俺は何のも打てなかった! 全部、俺の見通しの甘さのせいなんだよ!」
真の差しので、息子のから吐きされた残酷な真実。
幸恵は息を呑み、胸を押さえた。
自分が自にい、親戚に誇らしげに語ってきた「能で優しい息子」の正体は、妻の功績を横取りして威張り散らしていただけの、卑で見栄っ張りな男だったのだ。