"母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景" 第3話
の縁とユニットハウス
そのの、が「たまには顔をそう」と言いし、義母の幸恵を連れて奈津美の実へと乗り込んできた。
実の広い敷に並ぶ棟のビニールハウスを見ろしながら、幸恵は番、で笑った。
「まあ、相変わらずビニールのばかりねぇ。もっと派な建物かとってたわ」
母のが丁寧に入れたお茶にをつけ、幸恵は単刀直入に切りした。
「さん、率直に申しげますけど、あのをの会社の事業に使わせていただけないかしら。いずれ川の孫に渡るものですから、今から使っても同じことでしょう?」
母のは、湯呑みからちる湯気の向こうで、静かに、しかし揺るぎない声で答えた。
「をどうするかは、私が決めることです。娘夫婦のためであっても、先祖から預かったを放す気はありません」
義母がなおもいがろうとした、奈津美はちがった。
「もうやめてください、お義母さん。私の族を世の具にしないで!」
そのを取りなすどころか、は苛ちをわにして吐き捨てた。
「おい奈津美、みっともない真似をするなよ! 母さんも良かれとって言ってるんだから!」
母の無礼を叱るでもなく、妻の痛な叫びを受け止めるでもなく、ただそのの空気をやり過ごそうと妻だけを責める夫。
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その瞬、奈津美のでの結婚活に、完全に終止符が打たれた。
「……もう、終わりにしましょう」
京に戻ったその夜、奈津美は婚届をテーブルに置いた。は「のことくらいでげさだな」と嘲笑し、義母は「あんなのい嫁、こっちから願いげよ」と罵った。実のには切をさせない形で公正証を作成し、奈津美は、スーツケースつで故郷の農へと帰還した。
しかし、戻った故郷で奈津美を待っていたのは、傷に浸る暇もない過酷な現実だった。
築になる実の母は、ので根の瓦が傷み、基礎の補事が必になっていた。事期はおよそヶ。その、母にはむことができない。母のは隣町にむ妹のへにを寄せることになった。
だが、ハウスの作物はたりとも放っておくことはできない。
「私がここに残るわ。畑のそばにいなきゃ、やりも温度管理もできないもの」
奈津美は実の敷内、棟のハウスのすぐ脇に、事現や災害に使われる頑丈なプレハブのユニットハウスを台、仮設宅として設置した。
役所への続きをきちんと済ませ、も気も引き込み、エアコンと簡易シャワーを備えた、清潔で適な仮まいだった。昼は汗にまみれてをいじり、夜は静まり返ったハウスの横で虫の声を聞きながら、のように眠る。
都会で息を潜めて夫の嫌を伺っていた頃に比べれば、国のような静けさだった。
だが、この「実の敷のハウスの横で暮らしている」という事実が、のを伝ううちに、奇妙な形にねじ曲がっていくことなど、当の奈津美はる由もなかった。