"受話器の向こうの春" 第8話
炎の嵐を抜けて
交換をびすと、廊はすでにく息苦しい煙で満ちていました。
「ハンカチをに当てて! く、姿勢をくして!」
子先輩の声に導かれ、ハルはモンペの裾を握りしめながら、階段を転がるようにして駆けりていきました。
へ通じる裏のい鉄扉を押しけた瞬。
息を吸い込むことすらできないほどの凄まじいが、の全を真正面から打ち据えました。
「……ああっ!」
あまりの景に、ハルはわずちすくんでしまいました。
そこは、昨まで自分たちが歩いていた神戸のではありませんでした。
夜空は面、ドス黒い赤に染まりがり、巨な柱があちこちでに向かって噴きがっていました。
を吹き荒れるに乗って、燃え盛る無数ののが、まるで赤い猛吹のようにり注いできます。
全体が薪のように燃え盛る音が、爆撃のプロペラ音となりって、獄の底のような轟音を響かせていました。
「ハルちゃん、をしたらあかんよ! 絶対にしたらあかん!」
子先輩がハルのを、骨がきしむほどく握りしめました。
はのを浴びながら、炎と煙のを縫うようにして駆けしました。
には、財具を背負った々、泣き叫ぶ子どもを抱いた母親、怪をしてを引きずる老たちが、先にと逃げ惑っていました。
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「あっちへくな! が回っとるぞ!」
「の方へ逃げろ!」
叫び声がび交いますが、どちらを向いてもの壁がちふさがり、どこが全なのか誰にも分かりません。
すぐ横の民の根に焼夷弾が突き刺さり、瞬にして青い炎が吹きがりました。
吸い込む空気が喉の奥を焦がすようにくて、激しい咳が止まりません。
「先輩! が見えへん!」
「うちについてきなさい! を止めちゃあかん!」
どこをどうったのか、ハルには記憶がありませんでした。
ただ、をる子先輩の背と、固く握られたの温もりだけを信じて、もつれるを必ににし続けました。
を焼夷弾の破片がヒュンと音をててかすめ、すぐろの柱がバリバリと音をてて倒れました。
歩でも遅れていれば、命はありませんでした。
どれほどの、ののをり続けたのでしょうか。
がしずつたいへと変わり、元の面がの触に変わったころ、はのの神社の段へとたどり着いていました。
境内には、焼けされた勢の々が、煤だらけの顔でへたり込んでいました。
は段のに崩れ落ちるように倒れ込みました。
肺が張り裂けそうになりながら、激しく息を吸い込みます。
ふと見ると、子先輩のモンペの裾が黒く焦げていました。
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ハルのの甲にも、ので傷を負ったさなぶくれがいくつもできていました。
「ハルちゃん……怪はない? 丈夫?」
息を切らしながら、子先輩がハルの体を撫で回すようにして確かめてくれました。
「せ、先輩……うち、怖かった……ぬかとった……」
張り詰めていた糸がプツリと切れ、ハルの瞳から涙がボロボロと溢れしました。
子先輩はハルのさな肩をく抱きしめ、自分の胸に顔をうずめさせてくれました。
「ようったね。偉かったね……もう丈夫やからね」
先輩の胸の温もりと、激しく打つ臓の音を聞きながら、ハルは声をげて泣き続けました。
やがて、い恐怖の夜が、しずつけていきました。
の空が青くみ始め、夜けのがを照らししたとき。
はゆっくりとちがり、段のからに広がるを見ろしました。
そこにあった景を目にした瞬、ハルの喉から、言葉にならない掠れた叫びが漏れしました。