"受話器の向こうの春" 第2話
い着物と黒い袴
格のびに浸っていたのも束のでした。
話局の養成所でハルを待ち受けていたのは、像を超える厳しい訓練の々でした。
朝はに起し、すぐに講堂へ集められます。
まずは徹底な発声練習でした。
「あ・え・い・う・え・お・あ・お!」
「か・け・き・く・け・こ・か・こ!」
お腹の底から声を張りげ、音音を正確に発音しなければなりません。
ハルはずっと息を潜めてきてきたため、きな声をすこと自体に慣れていませんでした。
どうしても喉だけで声をしてしまい、すぐに声がかすれてしまいます。
「そこ、声がさい! やり直し!」
教官の鋭い声が容赦なくびます。
「話の向こうにはきたがいるのよ!
あなたの声が話局の顔になるの!
もっとお腹から、相の胸に届くように声をしなさい!」
何度もたされ、注されるたびに、ハルの顔は真っ赤になりました。
周りの同期たちがうまくこなしていくのを見るたび、胸の奥がきゅっと痛みます。
けれど、くじけるわけにはいきませんでした。
夜、寮の布団に入ると、枕に顔を押し当ててさな声で発音の練習を繰り返しました。
訓練は発声だけではありません。
目のに広がる無数のさな穴は「ジャック」と呼ばれていました。
ランプが点いた穴へ、属の端子がついた太いコードをく差し込む練習です。
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コードはいのほかく、属のプラグはずっしりとたいものでした。
最初のうちは狙った穴に入らず、指先を挟んで血豆を作ることも毎のことでした。
さらに、の病院や警察署、役所の番号をすべてに叩き込まなければなりませんでした。
「兵庫区の〇〇病院は?」
「央区の〇〇警察署は?」
教官のの質問に、秒でも迷えばが落ちます。
「あなたの迷いは、患者さんの命を奪うことになるのよ!」
その言葉のみに、ハルは背筋を震わせました。
話をつなぐことは、ただの取り次ぎではない。
の命を預かる仕事なのだと、骨の髄まで教え込まれたのです。
数かにわたる過酷な訓練を終えた卒業の。
ハルたちの元に、願の制が渡されました。
真っな綿の着物に、きりりとした黒い袴でした。
寮の部に戻り、ハルは震えるでい着物に袖を通しました。
糊のきいたが、肌に触れるとひんやりとよく引き締まります。
袴の紐を胸ので丁寧に結び、鏡のにちました。
そこに映っていたのは、台所の隅で縮こまっていた、あのみじめな女ではありませんでした。
背筋をぴんと伸ばした、誇りい話交換の姿でした。
「これが……うち……?」
ハルはそっと自分の胸元にを当てました。
臓がトクトクと力く脈打っているのが伝わってきます。
まれて初めてにつけた袴は、歩くたびにさやさやとよい音をてました。
それから毎、ハルはその袴姿で話局へと通いました。
当の神戸のでは、い着物に黒い袴で歩く交換の姿は、誰もがる清々しい景でした。
通りを歩いていると、所のおじさんが「おはようさん、今も頼むで」と声をかけてくれることもありました。
(うち、ちゃんと働いてるんや)
朝のの、自分のでを踏みしめて歩く。
誰のおけでもなく、自分の力で居所を勝ち取ったのだという誇らしさが、ハルの胸を満たしていました。
凍えきっていたに、ようやくあたたかなが訪れたような気がしていました。