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"倒産寸前の事務所が雇った、子連れ清掃員の正体" 第5話

暴かれた設計変更と裏切りの代償

数、俺はさち子の修正案を反映したカフェの内装パースと図面を携えて、クライアントのプレゼンに臨んだ。

結果は、満致の即決採用だった。

「桐さん、これだよ! デザインがお洒落なだけじゃない、子供連れのお母さんたちの線が完璧に計算されている! 現を本当によく見ているね!」

担当役員から絶賛され、基本設計から実施設計、現監理までの括受注が正式に決定した。払いの着が事務所の座に振り込まれ、倒産の危は髪で回避された。

事務所に戻った俺は、モップをかけていたさち子に満面の笑みで報告した。

「瀬さん、コンペ通りましたよ! 先方の役員が絶賛していました!」

さち子はモップのを止め、目を見いた。

「本当……ですか?」

「ええ、あなたの引いてくれた線のおかげです。本当にありがとうございました」

その瞬、さち子の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。彼女は元を押さえ、まれて初めて見るような、女のように無垢な笑顔を浮かべた。

「よかった……誰も、怪をしなくて……本当に、使いやすいおになるんですね……」

このは、設計が嫌いになったのではない。建築をし、の命と暮らしを誰よりも切にっているからこそ、過の事故の責任をに背負い、自らを罰し続けてきたのだ。

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だが、そのささやかなを打ち砕くように、事務所の固定話がけたたましく鳴り響いた。

「はい、桐デザインです」

話を取ったさち子の顔から、血の気がサーッと引いていくのを俺は目撃した。

「……え? どうして、この番号を……」

さち子のがガタガタと震え、受話器を取り落としそうになる。俺は慌てて受話器を代わった。

「もしもし、どなたですか」

受話器の向こうから、尊で神経質な男の声が響いた。

『あ、桐デザインの代表の方ですか? 私、帝都総都発の設計第部、副部の佐伯(さえき)と申します。そちらに、瀬さち子という女性が清掃員として潜り込んでいると聞きましてね。……忠告しておきますが、彼女は過にな施ミスをやらかして業界を追放された問題物です。即刻解雇されることをお勧めしますよ。うちの関連会社にも、そちらの名がに入りかねませんからね』

「な……んだと?」

俺が鳴り返すに、話は方に切断された。

翌の午。事務所の引き戸が乱暴にけ放たれた。

入ってきたのは、級なオーダーメイドスーツを着込み、縁の鏡をらせたの男だった。胸元には級建築士のバッジ。

「久しぶりだな、瀬」

男——佐伯は、事務所のを値踏みするように見回し、作業姿のさち子を見ろして笑を浮かべた。

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「院卒のエリート建築士が、こんな吹き溜まりの雑居ビルで雑巾がけか。お似いの末だな」

「佐伯さん……何の用ですか。帰ってください」

さち子は唇を噛み締め、背に美咲を隠した。

「用があるから来たんじゃないか。……例のの落事故の件だ。来、国交省の定期監査が入ることになってな。当の設計図面の保管記録について、おの署名と捺印が数箇所りないんだよ。追認の類にサインしろ」

佐伯が差しした類の束。

その番にあった図面番号を目にした瞬、さち子の体が激しく直した。

「……これ、何ですか?」

「何って、おが当描いた構造図の最終版だろ」

「嘘をつかないで!」

さち子が、これまで聞いたこともないような鳴のような声をげた。

「この支持具の仕様……私が指定したステンレス鋼の特注ボルトじゃありません! コスト削減用の、規格の価なメッキボルトに変更されている! 私のサインじゃない! 誰がこれを改ざんしたの!?」

事務所の空気が、瞬で凍りついた。

佐伯の顔から笑が消え、気な焦燥のが浮かんだ。

「黙れ! おは設計の責任者だったんだ! 請けの務がコストカットで図面を差し替えたとしても、それを見抜けなかったおの過失なんだよ! 今さら蒸し返す気か! おがをかぶって消えたから、会社も俺も助かったんじゃないか!」

「……え?」

さち子の瞳孔が、信じられないものを見るように見かれた。

すべてが繋がった。

事故の原因は、さち子の計算ミスなどではなかったのだ。司である佐伯が裏で施業者と結託し、利益を抜きするために勝に図面を改ざんして価な部材に変更し、事故が起きた瞬にすべての責任を子育ての女性チーフであったさち子に押し付けて隠蔽していたのだ。

「貴様……!」

俺は胸ぐらを掴まんばかりに佐伯に詰め寄った。

「のを何だとってるんだ! 今すぐここからてけ!」

「ふん、零細のデザイナーが吠えるな。おい瀬、サインしなければ、おが勝に図面を持ちして営業妨害をしていると警察に突きすぞ。度と子供をまともに育てられない体にしてやる」

佐伯は吐き捨てるように言い残し、類をに叩きつけてっていった。

に散らばる偽造された図面。

さち子はそのに膝から崩れ落ち、震えるで自らの顔を覆った。

「私……ずっと、自分のせいで誰かを殺しかけたんだとってた……。だから、鉛を捨てて……全部諦めて……」

美咲が「ママ、泣かないで」とさなでさち子の背をさする。

俺はに落ちた偽造図面を拾いげ、拳をく握りしめた。

許せなかった。真面目に空と向きい、の全を誰よりも考えていた建築士を罠に嵌め、を奪い、をすすらせてきた腐った奴らが。

「瀬さん、顔をげてください」

俺はさち子のにしゃがみ込み、その目を真っ直ぐに見つめた。

「戦いましょう。あなたの奪われた誇りを、建築士としての未来を、俺たちで取り戻すんです」

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