"60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求" 第11話
退院初の第声
なオーク材の玄関ドアをけ放つと、の効きすぎたぬるい空気とともに、級芳剤と甘ったるいの匂いが腔を突いた。
理の玄関ホールには、脱ぎ散らかされたブランド靴が無造作に転がっている。
廊を抜け、広な吹き抜けのリビングへと歩みをめると、そこには目を疑うような景が広がっていた。
本革のイタリア製型ソファの央に、イタリアの級スーツを着崩した夫の剛田達也がふんぞり返り、片にクリスタルグラスの級赤ワインを揺らしている。
ガラステーブルのには、座の老舗百貨や級ブティックの袋がの踏みもないほど積みなり、義母の数が、指輪の煌めくで買い込んだばかりの宝箱をおしそうに撫で回していた。
隣では、義妹の真由美がスマートフォンをいじりながら、級パティスリーのマカロンをつまんでいる。
私がさなボストンバッグを肩にかけ、無言でリビングの入にち尽くしていると、達也が面倒そうに線だけをこちらへ向けた。
ちがる素振りすら見せない。
ぶりに還した妻の姿を認め、その男が最初に発した言葉は、ねぎらいでも、堵でもなかった。
「おい、美桜。帰ってきたならちょうどいい。
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……母さんへの毎百万円、どうして止めたんだ?」
鼓膜を殴りつけるような、当然の権利を主張する傲な声。
「おが寝込んで送をサボっていたせいで、今の支払いが落ちなくて母さんが座の商で赤っ恥をかいたんだぞ。体どう責任を取る気だ?」
義母の数もまた、にしていた扇子でバシッとテーブルを叩き、吊りがった目で私を睨みつけた。
「そうよ! 先と今でか分、千百万円よ! ぶらで帰ってくるなんて、本当に気の利かないグズね! 今すぐそのスマホを操作して、私の個座へ振り込みなさい!」
真由美もマカロンを放りし、ヒステリックに同調する。
「ほんと最! 私のロンドン旅の軍資、どうしてくれんのよ! 病気だか何だからないけど、族に迷惑かけて平気な顔してんじゃないわよ!」
線をさまよい、胸にく痛ましい術痕を刻みつけて還した妻に対し、言のいたわりもなく、番に浴びせられるの無。
その底れぬ欲と醜悪さを目の当たりにし、私の胸の奥で、に対する最のれみが完全に蒸発した。
「……ふっ、あははは」
私の乾いた唇から漏れたのは、静かな笑い声だった。
「な……何がおかしいんだよ、気の悪い!」
達也が苛ちをわにしてちがろうとする。
私は肩にかけていたボストンバッグをに静かに置くと、氷点の差しでを見据え、凛とした声で言だけ告げた。
「毎百万円の施しを止めただけではありませんよ。……あなた方の会社の命綱である億円の包括保証は、分に完全解除されました。そして、この億円の豪邸も、すでに差し押さえの続きが完しています」
達也が抜けにをけたまま凍りついた――まさにその瞬だった。
ピピピピピ! ピピピピピ!
リビングの静寂を切り裂くように、テーブルのの達也のスマートフォンが、狂ったような子音を鳴り響かせた。