"60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求" 第2話
スマートフォンの無慈な文字列
画面に並んでいたのは、目を疑うような暴力な言葉の羅列だった。
『おい、母さんへの毎600万、どうして止めたんだ?』
『母さんの座に振り込まれてないって、ので朝から騒ぎしてるぞ。おが入院したせいで、今の座のエステ代と宝飾品の支払いが落ちなかったらしいじゃないか。どう落としをつける気だ?』
『おい、既読がつかないぞ。寝たふりしてサボってんじゃないだろうな? さっさとスマホでネットバンキングいて、送続きしろ』
『母さんがヒステリー起こして俺につ当たりしてきて最悪なんだよ。おが倒れたせいで俺の仕事の予定まで狂ってるんだ。いい加減にしろ。くを振り込め』
メッセージをスクロールしても、並んでいるのはそれだけだった。
術は成功したのか。容態はどうなのか。いつ目を覚ますのか。
妻のを気遣う言葉など、文字たりともしなかった。
ただひたすらに、私が私財から義母へ毎無償で供与していた「百万円」の送が途絶えたことに対する、理尽なりとの無だけがき殴られていた。
続いて、義妹の真由美からのメッセージをいた。
『義姉さん、お母さんがり狂ってて超ウザいんだけど。私の今の旅の遣い、お母さん経由で貰うはずだったのにどうしてくれるわけ? 病気だか何だからないけど、ベッドのから指先かすくらいできるでしょ。
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く払ってよ』
指先からスッとが引き、スマートフォンが病のシーツのに滑り落ちた。
乾ききった唇から、ヒュウと擦れた呼気が漏れす。
図のモニターが、穏なアラーム音を瞬だけ鳴らした。
義母の数の豪奢な暮らしを支えるため、私が個な信託座から毎自送させていた百万円。
私が自宅で突然倒れて緊急術となり、信託システムの定期承認にアクセスできなかったため、セキュリティプログラムが作して送が自止したのだ。
私がの淵で肺に繋がれ、自力で呼吸することすら叶わなかったその週の、彼らが気にしていたのは、妻の命ではなく、自分たちの贅沢昧の原資が途絶えたことだけだった。
「……ふっ」
私の乾いた喉から、自嘲の笑みが漏れた。
頬を伝って筋の涙がこぼれ落ちたが、それはしみの涙ではなかった。
自らの愚に対する底れぬ恥辱と、目のに広がる厳な現実に向けられた、絶対な決別の涙だった。
私の本名は、神堂美桜(しんどう・みお)。
本最の複企業体であり、融、産、業、エネルギーを牛る『神堂グループ』の創業者族の直系であり、グループの頂点に君臨する最総帥である。
莫な富と権力に囲まれて育った私は、肩きや文学な資産に群がるに辟易し、ただのとして、飾り気のない温かな庭を築きたいと切望していた。
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だからこそ、自らの自と位を完全に隠し、資産の令嬢などではなく、単なる元派遣社員の「野美桜」として、堅貿易会社・剛田物産の代目社である達也と見い結婚したのだ。
結婚、傾きかけていた達也の会社を救うため、私は分を隠したまま、神堂グループのメインバンクを通じて「億円」もの巨額の包括債務保証を秘密裏に取り付けた。
さらに、見栄っ張りな義母を満させるため、私の個資産管理法が所する港区麻布の「億円の豪邸」を役員社宅という名目で無償提供し、毎百万円もの活支援を自腹で義母の座へ注ぎ込み続けてきた。
すべては、ささやかな族の幸福を守るため、する夫をから支える妻としての真からただった。
だが、彼らにとって私は何だったのか。
ただ無尽蔵にを吐きし続ける、文句を言わない「便利な財布」に過ぎなかったのだ。
財布が壊れて命を落としかけていようとったことではない。が塞がったなら、鳴りつけて無理やりにでもこじければいい――彼らの考の根底にあるのは、それだけだった。
胸の傷が、ズキリと疼いた。
その痛みとともに、私ののに燻っていた「族への」という名の温もりは、音をてて燼に帰した。
全の毛細血管を流れる血液が急速にえ込み、最総帥としての徹な理性が、暗の底で静かに覚していった。