みかん小説
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"大正、子守奉公の少女" 第14話

言葉と針

旅順の敷の奥様は、私の言葉遣いをよく直した。故郷の言葉がると「お客様のでは、そう言わないの」と教え、子どもたちへの呼びかけ方も細かく注した。私は京で覚えた言葉があれば分だとっていたが、このにはこのの決まりがあった。

何度も言い直すうちに、自分がまれたの言葉がからにくくなるさえあった。

ある、女の子が転んで膝をすりむいた。私は慌てて「痛かったなあ」と声をかけ、故郷の言い方で慰めた。奥様はくで聞いていたが、そのときは何も言わなかった。あとで「子どもが怖がっているときは、あなたの言葉の方が落ち着くこともあるのね」と言った。

私はにった。直されてばかりいた言葉にも、役につ面があるのだ。

奥様は着物の縫い方も教えてくれた。最初は針の運びが揃いで、縫い目が曲がった。布を引っ張りすぎるとつれ、緩めれば隙ができる。私は何度も糸をほどき、同じところを縫い直した。奥様は元を見て「急ぐと、あとで余計にがかかります」と言った。

その言葉は台所仕事にも子守りにも通じるようにえた。

度、女の子の着物の裾がほつれたことがあった。私は習ったばかりの針目で直し、朝までに仕げた。女の子は何もらずにそれを着てり回った。

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奥様は裾を見て、「きれいにできたわね」と言った。

私はさくをげたが、内では何度もその言葉を繰り返した。誰かのために働くことと、自分の腕が達することが、初めて同じ所で結びついた気がした。

針仕事を覚えた私は、ある、国の使用の袖がほつれているのに気づいた。言葉でうまく伝えられず、私は自分の袖を指して針をかす仕をした。相はし考えてから笑い、着物を差ししてくれた。私は仕事のにほつれを直し、翌朝返した。

相は何度も礼を言い、代わりに庭で使う具の名を教えてくれた。

互いの言葉は分に通じなかったが、直した袖は役にった。私はそのとき、覚えた技術は主のだけのものではないとった。京の女から教わった盆の運び方も、旅順の奥様から教わった縫い方も、別のを助けることができる。

奉公先を替えるたびに仕事を覚え直してきたが、私ので初めてひとつにつながった。

敷で働くたちとのにも、しずつ々の習慣ができた。国の使用が買い物から戻ると、私は荷を受け取って台所へ運んだ。言葉が通じないときは、品物を並べて指さした。相が何か説してくれると、私は分かったところだけ繰り返す。

違えれば笑いい、通じれば仕事がく済む。

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違うの言葉を覚えるのも、京の作法を覚えたときと似ていた。

正には、敷ので本式の膳が用された。私は伝いをしながら、故郷では母が何を作っているだろうと考えた。では祝いの品を揃える余裕はなかったが、母は必ず何かつ、いつもと違うものを膳にのせてくれた。

旅順では派な料理が並んでいた。それでも、母の作った素朴な汁のをいすと、胸がきゅっとなった。

夜、自で針箱をくと、故郷から持ってきた古い糸と、奥様から分けてもらったしい糸が並んでいた。私はそのつを見比べた。まれたの暮らしを捨てたわけではない。しい所で覚えたことが、しずつ自分のに積もっていくのだ。

どこへっても最初からやり直しだとっていたが、持っていけるものは荷物だけではなかった。

がづくと、庭の々に芽がついた。奥様は庭を見ながら、になればいが咲くと教えてくれた。私はまだ、そのりをらなかった。いのにも、自分が覚えておきたいものができるのだろうか。そんなことを考えながら、私は窓辺で次の縫い目に針を通した。

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