"昭和62年、国鉄最後の日に駅弁を一つ売らなかった理由" 第13話
見積にない
、誠が会社の休みを取って、私の配達に付き添った。
へ個、町役へ個、夕方に残業班へ個。帳面ではに個売れる計算だった。私は嫌だったが、誠は腕計を何度も見ていた。
「母さん、ここで分待つんだね」
「役のが会議だから」
「待ってる、ももけない」
「でも、個買ってくれる」
「個のために片分、待ち分。戻るも入れたら分以だ」
私はむっとした。客に頼まれたら届ける。それが信用だとっていた。
誠はので、に線を引いた。
「の注文をまとめて、同じ方向の会社にだけ配達する。役は受取を決めてもらう。それが無理なら、へ取りに来てもらう」
「そんなこと言ったら、断られるわよ」
「断られたら、続けられない注文だったってことだ」
私は窓のを見た。畑の向こうに、しい宅ができている。昔は駅にあった町のが、しずつのほうへ伸びているようだった。
誠は計を見せた。
「駅にってたときは、列が来るが売りだった。でも配達は、ってるが売れないなんだよ」
私は納得しきれず、次の配達では自分で計を見た。積み込みに分、移に分、受け渡しに分。を戻して箱を洗うまで、確かに分以かかる。
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帳面にそのをくと、今まで無料だとっていたに、初めて値段がついた。
午、役の担当者に話すると、な返事が返ってきた。
「玄関の受付で受け取れるようにしますよ。会議が引くもありますから」
私は受話器を置き、誠に言った。
「分が分になった」
「ほらね」
「でも、お礼は言わない」
「なんでだよ」
で笑った。
夜、私は注文ごとの費用をきした。材料、箱、調理の、配達の。今まで《ついで》だとっていた仕事にも、ちゃんとおがかかっていた。
番困ったのは、百円の昼弁当だった。個まとめて届ければ続けられる。個だけくへ運べば、赤字になる。は同じなのに、売り方で利益が変わる。
「からはへ週、個以。夕方は個以の予約があるだけ。町役は指定に受付で受け取り」
私は条件をにき、井さんと役へ相談した。
井さんは腕を組んで考えた。
「週なら、残りは田さんに頼める。献も変わるし、かえっていいかもしれないわね」
「それでいいんですか」
「毎軒に頼む決まりなんてないでしょう」
私は自分のい込みがまたつ崩れる音を聞いた。
方、誠の国沿いのの話はまなかった。は敷のほかに、内装を元に戻す費用も契約に入れたいと言っている。
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駐の入りも、管理者への確認が必になりそうだった。
「借りないの?」
私が聞くと、誠はを尖らせた。
「まだ決めてない」
「焦って決めなくていいよ」
「母さんに言われると、余計に悔しい」
私は返事をせず、夕飯の根を切った。
良治が聞を畳みながら言った。
「おら、同じことをしてるんだな」
「何が?」
「俺は駅のを放せなかった。誠は国のを放せない。所にしがみついてる」
私は包丁を止めた。
「あなたは?」
「俺も、そろそろ別の仕事を覚えないとな」
翌朝、良治は配達先ごとにを変えた札を作っていた。赤が、青が役、緑が受取。昔、駅で荷物を仕分けたときのやり方だという。
「俺にもできることがあるだろ」
私は札を受け取った。
代が変わると、古い経験が全部役にたなくなるわけではない。使う所を変えれば、まだ働いてくれる。