"50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿" 第12話
刻印された贖罪の輪
母の言葉が、私のので激しく乱反射した。
銭も使っていない? をつけていない?
「嘘よ……そんなの、信じられるわけがない!」
私は揺を隠せないまま、乱暴に通帳のページを次々とめくっていった。
最初の万円の印字のには、私の像を絶する景が広がっていた。
、またと、械の印字がびっしりとページを埋め尽くしていたのだ。
『1989315 オアズカリキン 30,000』
『1989720 オアズカリキン 50,000』
『19891010 オアズカリキン 10,000』
『1990118 オアズカリキン 5,000』
『1990425 オアズカリキン 20,000』
ページをめくっても、めくっても、付と入の記録が途切れることなく続いていた。
毎決まった額ではない。あるは数万円、景気が良かったなのか万円が振り込まれていることもあれば、官の仕事が途切れたなのか、わずか千円や千円という端数の入が刻まれているもあった。
それは、まるで現で銭をかき集め、懐に残ったわずかな当を削り取って、そのままATMや窓の械に滑り込ませたかのような、臭く々しい活の痕跡だった。
1991、1992、1993……そして、今、1994の4。
最のに印字された最の残の数字を見た瞬、私の指先が痙攣するように震えた。
当の農の結納の額を遥かに超え、百万、百万円に迫ろうとする巨額の数字。
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私が毎朝に起きて、寒さに震えながら自転を漕いでいた々。
奨学の申請類をに、保証の欄をどう埋めるべきかで泣いていた夜。
でが止まり、暗い夜を歩きながら自分の無力さに打ちひしがれていた。
私が実と縁を切り、佐々の々に支えられながら必に自しようともがいていたその、父はこの通帳に、誰にも言わず、私にもらせず、ひたすらを積みて続けていたのだ。
「……何よ、これ」
私の喉から、掠れた声が絞りされた。
「何のために、こんなことしたのよ……! 私を邪魔者扱いして追いしたんじゃないの!? 万円で私を売りばして、厄介払いができて清々したから追い払ったんじゃないの!? どうして……どうしてこんな通帳があるのよ!!」
私の叫び声に、父がゆっくりと顔をげた。
その瞳には、かつて私を恐怖で縛り付けた険しさは微もなく、ただい悔と、自らの愚かさに打ちのめされた老いた男の痛みが浮かんでいた。
「……おのだ」
父のく掠れた声が、庭先に落ちた。
「使っていない。おの結納も、そののも、円たりとも俺たちの活には使っていない」
「だから、なんでよ!!」
私は通帳を胸のさまで掲げ、激しいりと混乱のまま父を睨みつけた。
「おに困っていたから私を学させられなかった、そうっていたからこそ、私は自分を納得させてきたのよ! 『うちは貧乏だから仕方なかったんだ、私がするしかなかったんだ』って、そうやって自分に言い聞かせて、お父さんを憎むことでなんとかを保ってきたのよ! それなのに……おがあったんじゃない! これだけのを用てられる力があったんじゃない!!」
私の叫びは、もはやりというより、根底から世界をひっくり返された者の鳴だった。
「どうしてあの、この半分でも私の学費にしてくれなかったの!? どうして『女に学問はいらない』なんて嘘をついて、私を追い詰めたの!? 最初から私にこのおを渡してくれていれば、私は佐々のたちにをげて迷惑をかけることもなく、普通に学へけたじゃない! お父さんは……私のを弄んで、体何がしたかったのよ!!」
激しい問い詰めに、父は唇を震わせ、苦痛に顔を歪めた。
そして、庭の隅ののに々とを垂れ、決してにしなかった「真実の告」を、ぽつりぽつりと紡ぎ始めたのだ。