"父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密" 第3話
の匂いがする男
宮田輔(みやた・だいすけ・歳)さんと会ったのは、父がくなるのだった。 病状がみ、次第にいご飯を受け付けなくなった父のため、私は毎週末のように県内の直売所や農産物フェアを巡り、柔らかく炊いても米粒の輪郭が崩れず、甘みのい良質な米を探し求めていた。 そんな、民運公園でかれていたさな収穫祭のテントで、に焼けたの男性が声をかけてくれたのだ。
『お父さんのためのご飯、探してるんですか?』 それが輔さんだった。 私の切実な事を聞いた輔さんは、自げに米を売りつけるようなことは切せず、しゃがみ込んで私の目線にわせ、優しく教えてくれた。 『炊くにしっかりとはに浸すこと。加減は規定の目盛りより割ほどめにして、炊きがったら底からきく空気を抱かせるようにほぐしてください。精米したての米なら、柔らかく炊いてもベチャつかず、お寄りでもすんなり喉を通りますよ。うちの米、毎週曜の夕方に内のふれあい直売所にしてますから、よかったら度試してみてください』
翌週の曜、仕事帰りに買い求めた『宮田農園』のキロ袋。 教わった通りに炊きげた米をべた父は、目を丸くして数秒きを止め、それからポツリと呟いたのだ。
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『この米……昔、朝で買ってたあの親父さんの米に、どこか似てるな』 それ以来、曜の夕方に直売所へ寄ることが、私の欠かせない課となった。
輔さんは、でほどれたあいの田園帯で、母親の(はるえ・歳)さんとで米農を営んでいるという。 交際が始まってからも、私の父の介護を第に考えてくれた。 「お父さんの体調が番事だから」と、のデートや旅など度も望まず、デイサービスののわずか、、所の喫茶で況を報告しうだけの逢瀬。には実までを運んでくれ、見りの父と何も楽しそうにや候の話をしてくれた。 無だった父が、輔さんの訪問を待ちにし、彼が帰ったに『あれはの匂いがする本物の男だ。いい男だな』と嬉しそうに呟いていたことを、私は鮮に覚えている。
終わりの曜、実を訪れてくれた輔さんに、私は姉たちから突きつけられたち退きと遺産分割協議の顛末を、涙ながらに打ちけた。 「私、来にはこのをていかなきゃならないの。でも……今の私には何も残っていない。も、族も失って……持っていけるのは、段ボール数箱の荷物だけなの」
俯いて震える私のを、輔さんの節くれだったきな掌が、包み込むように握りしめた。
「何も持ってないなんて言うなよ。俺は、美咲さんと緒に暮らしたいんだ」
輔さんは居まいを正し、正座をして私の目を真っ直ぐに見つめた。 「本当は、お父さんの喪がけて、もっと落ち着いてから言うつもりだった。順番がめちゃくちゃになってしまって申し訳ない。……美咲さん、俺と結婚してください。うちに来て、母さんとで暮らしてくれないか」
その瞬、張り詰めていたの堤防が決壊し、私は輔さんの胸ので声をげて泣きじゃくった。 居所を失い、世から見捨てられたとじていた私に、しいの扉をいてくれた。 こののためなら、どんな苦労でも分かちおう。 たとえ、どれほど貧しい農の活が待ち受けていようとも――。