"朝八時までのヒーロー弁当" 第20話
いつもの朝に
の朝、業団の空はまだ暗かった。栄プレス業のからは夜勤を終えたたちがぽつぽつとてきて、入れ替わりに番の社員が歩いていく。その刻にわせて、の向こうのヒーロー弁当にかりがついた。昔と同じ景に見えるが、台所のはし変わっている。注文表が枚並び、い容器はい棚に置かれ、正夫の子にはい座布団が敷かれていた。
最初に来たのは、目をこすりながらをてきた若い作業員だった。「親父さん、朝飯ください」。正夫はさいほうの弁当を指さした。「帰って寝るなら軽めにしとけ」。若者は笑い、「はいはい、分かってます」と答えた。しず子は弁当を渡し、「ちゃんと寝るんだよ」と声をかけた。若者は湯気の残る包みを事そうに持ち、横断歩を渡っていった。
次に堀が来た。相変わらず作業着には油染みがあり、髪はきちんと撫でつけられている。正夫は堀の弁当に卵焼きを切れ増やしかけ、途でを止めた。「今は注文表にいてある分だけだ」。堀は「そうだな」と笑った。しず子は横から「堀さんは盛りっていてあるよ」と教えた。正夫は老鏡をかけ直し、注文表を確かめてから蓋を閉めた。
翔太と同期のが台を押してきた。今朝の会社注文分は個。は容器を数え、受け渡し用のに印をつけた。
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翔太のろには、しく入った社員がバインダーを抱えてっている。「このが来から注文表を伝います」。翔太が紹介すると、正夫は「字はきくけよ」と言った。は真剣な顔で頷き、翔太は「親父さんの最初の注はそれなんだ」と笑った。
台をかすとき、正夫がわずを伸ばした。だが翔太が「丈夫です」と言うより先に、正夫は自分でを引っ込めた。しず子はその様子を見て、何も言わずに微笑んだ。台の輪がを渡っていく。昔はで運んでいた弁当が、今は若いたちのでへ届く。頼ることを覚えたのは、だけではなかった。
朝を過ぎると客が落ち着き、美紀が空いた容器を洗い始めた。しず子は売を帳簿にき込み、正夫は次のの仕入れを確認する。昼の予約を打ち切られたあの、はを閉めることになるとっていた。実際、閉めてもおかしくなかった。だが堀が個を頼み、翔太が注文表を作り、浦が自分の判断を見直したことで、はしい仕事の形を選ぶことができた。
そこへ、作業着姿の浦がで軒先にった。今朝はくから現を見回っていたらしい。鏡の奥に疲れはあったが、あの夜のように目が赤いわけではない。「朝をつください」。浦は財布をし、しず子へ声をかけた。
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しず子は「普通でいいですか」と尋ね、浦は「はい。今は普通で」と答えた。
正夫は台所の奥で弁当を詰めた。ご飯、煮物、唐揚げ、そして甘くない卵焼き。蓋を閉めるに度を確かめ、しず子へ渡す。しず子は代を受け取り、釣り銭を揃えた。浦は弁当をにすると、正夫のほうを見て「今もありがとうございます」と言った。正夫はげさに返事をせず、「昼まで置かずに、めにえよ」と答えた。
浦がると、しず子は台の端に置かれたさな包みを見つけた。卵焼きと煮物がしだけ入った、疲れた顔の客に渡すためのおまけだ。「今はまだ渡してないね」。正夫は「いちばん必そうなが来たらな」と言った。しず子は頷き、包みを涼しい所へ移した。約束通り、今のおまけはつだけ。それで分だった。
午、しず子は先の札を裏返した。「本はここまで」。正夫は炊飯器の源を確かめ、子からゆっくりちがった。向かいのからは、プレスのい音が聞こえてくる。もあの音は鳴り、夜勤を終えたと番へ向かうがをき交うだろう。正夫はシャッターをろすに、の向こうを度だけ見た。
「は何個だ」。正夫が尋ねると、しず子は注文表を見て答えた。「個。あとは売りの分だけ」。正夫は「分かった」と頷いた。
と同じように、はのご飯の話をしている。ただつ違うのは、今なら無理をせず、も、その次の朝も作り続けられることだった。