"朝八時までのヒーロー弁当" 第5話
昼休みの個
久しぶりに炊飯器の湯気ががった昼、正夫は個の弁当を台に並べた。唐揚げは揚げたに網で油を切り、卵焼きはしっかりを通してから粗を取る。昔のように朝から昼まで置くのではなく、受け取りの刻にわせて詰める。しず子は弁当をつずつ数え、注文したの名をさなにいた。数が決まっているだけで、台所の仕事は驚くほど落ち着いていた。
正午のサイレンが鳴ると、堀がの若い作業員を連れてからてきた。「親父さん、個頼んだぞ」。正夫は「分かってる」と答え、しず子が包みを渡した。若者のが蓋をけると、湯気がふわりとった。「うわ、これ久しぶりだ」。もうは堂の定も悪くないと置きして、「でも、ここの唐揚げはが違う」と笑った。正夫は聞こえないふりをして、網のの最の個を片付けた。
はへ戻ったが、しばらくして別の社員が、のに現れた。「もう売り切れですか」。しず子が「今は予約の個だけなの」と答えると、男は残そうに頷いた。夜勤けに何度か顔を見ただった。翌も同じ男が来て、その次のには同僚を連れてきた。堀が班の分を受け取る横で、先につ数がしずつ増えていった。
「余計に作れば売れるかもしれない」。しず子が言うと、正夫は首を横に振った。
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「昨も今も買えなかったがいるからって、も同じ数とは限らん」。以のように見込みで作って残すことを、はもう続けたくなかった。そこでしず子は、昼に買いたいにはの夕方までに話をもらうことにした。に名と数をくだけの、古な予約方法だった。
ところがのでは、その枚がうように回らなかった。社員は部署ごとに休憩がしずつ違い、話をかけられない作業のもいる。堀が取りまとめようとしても、自分の班以の注文までは把握できない。しず子は昼に個売れた、別の班のを断ることになった。帰ってきた堀は「俺のやり方が悪かった」と謝ったが、正夫は「注文の仕組みがないだけだ」と答えた。
その週の曜、のにはほどが並んだ。買えたと買えなかったが混じり、い昼休みのうちにへ戻ろうとになる。しず子は釣り銭を違えないよう必だった。正夫は台所で次々と蓋を閉めながら、膝をかばっていた。がまた賑わうのは嬉しかったが、だけでは以と同じ働き方に戻ってしまう。
同じころ、浦は事務所の階からのの列を見ろしていた。しい堂の利用者数が、予測よりしだけ減っている。堂の委託業者からは、予定していた数に届かないが続くと仕入れの調が難しいと連絡が来ていた。
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浦は総務担当者を呼び、「あので買うのを止められないのですか」と尋ねた。
担当者は通達の写しを見ながら答えた。「ロッカーや内での保管は禁止しています。でも、昼休みにへて、買ってすぐべることは禁止していません。就業規則にも、そのような規定はありません」。浦はペン先を机に置いた。「では、堂の利用を推奨する案内をもう度してください」。担当者は頷いたが、し迷ってから「制と受け取られない表現にします」と付け加えた。
その夕方、翔太は休憩の掲示板にしい案内が張られているのを見た。「社員堂の積極な利用にご協力ください」。そこには罰則も禁止の文字もなかった。それでも若い社員のには、部の目が気になるから弁当を買いにくのはやめようと言う者がいた。翔太はを読み返し、堀に尋ねた。「これ、へ買いにっちゃ駄目ってことですか」。堀は首を振った。「いてあることと、いてないことを分けて考えろ」。
翔太はその夜、のでを止めた。勝から見えたのは、売れ残った個の弁当を廃棄記録にき込む正夫の背だった。では堂の数字が問題になり、では個の余りが問題になる。両方の事を初めて目ので見た翔太は、何かを変えるなら、るより先に数をきちんと集めることだとった。