"朝八時までのヒーロー弁当" 第4話
つかなかったかり
続けて弁当が残った夜、しず子は帳簿ので湯みを両に包んでいた。朝だけの売から仕入れを引くと、で夜けから働くを数字だけで説するのは難しかった。正夫はの米を量りながら、膝をゆっくりさすっていた。しず子はずっと見て見ぬふりをしてきたその作から、目をそらさなかった。
「もう、潮なのかもしれないね」。しず子が言うと、正夫は返事をしなかった。正夫がを始めたころ、しず子はまだ歳だった。さな息子を階で寝かせ、で夜けから唐揚げを揚げたもある。息子は今では方で庭を持ち、を継ぐつもりはない。はそれでよいとっていたが、いつか閉めるのことだけは、きちんと話しわずに来てしまった。
「を閉めるなら、あんたが歩けるうちに旅にでもこう」。しず子は無理に笑った。「朝、目覚ましをかけずに寝てみたいよ」。正夫は計量カップを棚に戻し、古い目覚まし計をに取った。針は午を指している。夜勤けのが半に来るためには、いつもその刻に起きていた。正夫は計を枕元に置いたが、ねじは巻かなかった。
翌朝、午に目を覚ました正夫は、かりをつけずに台所へりた。炊飯器のの丸子に腰をろし、窓の向こうのを見た。
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夜勤のラインがくい音が聞こえる。昔はあの音が鳴れば、体が勝にいた。だが今は米を研ぐ気力が湧かなかった。しず子は階段の途からその背を見て、何も言わずに部へ戻った。
午、翔太はいつものようにのでを止めた。シャッターがりている。さな軒先に湯気はなく、揚げ油の匂いもしない。翔太は腕計を見て、曜を違えたのかと考えた。だが今は平だ。へ向かう仲が「閉めたのかな」とつぶやくと、翔太は「分からない」としか答えられなかった。
ではしい堂の利用者数が順調に増えていた。浦は総務から届く別の数字を帳にき込み、見込みとの差を確かめた。社員の移が減り、堂の採算も計画通りだ。型向け部品の産ラインをちげる準備もんでいる。浦にとって、ののさながいているかどうかは、報告のどこにも載らない事項だった。
の昼休み、堀がのをた。堂で定をべた帰りだったが、なぜかが向かいのへ向いた。シャッターはまだ閉まっている。堀はしばらくってから、勝のさな呼び鈴を押した。階の窓がき、しず子が顔をした。「堀さん。どうしたの、こんなに」。堀は子を取り、「顔を見に来ただけだ」
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と言った。
しず子は台所に残っていたおにぎりと卵焼きを包み、堀に渡した。堀が代を置こうとすると、「うちの昼ご飯の分だよ」と断ったが、堀は銭を引っ込めなかった。「仕事を頼んだわけじゃない。けど、作ってくれたものには払わせてくれ」。しず子は銭を受け取り、代わりに温かい茶を杯した。はの戸で、しばらくの音を聞いていた。
「正夫さん、体を悪くしたのか」。堀の問いに、しず子は首を振った。「膝はから痛いけど、今すぐどうこうじゃないの。ただ、もう昼の注文がないから」。堀は頷き、それ以聞かなかった。をるとき、しず子が「みんな、堂はどう」と尋ねると、「悪くない。温かいし、選べる。ただな」と言いかけて、堀はを閉じた。
翌朝、堀は番の作業着のまま勝に現れた。「班の若いのが、ここの弁当をいたがってる。昼に個、作ってもらえないか」。正夫は台所の丸子からちがった。「会社の昼は堂だろう」。堀は「で買ってすぐうことまでは禁じられていない。昼休みは俺たちのだ」と答えた。正夫は膝をさすりながら、妻の顔を見た。
「昼に個なら、朝に起きなくても作れる」。しず子がそう言うと、正夫はし考えた。「昼休みに取りに来い。余計には作らんぞ」。堀は初めてほっとしたように笑った。が見送ると、しず子は米びつの蓋をけた。
シャッターはまだりたままだったが、台所にさなかりがついた。