"「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘" 第18話
借用の原本
原田からの借用の件がいたのは、幸が度目の航へるだった。法律相談を通じてやり取りを続けた結果、原田は私の署名が本のものではないことを認め、私へ保証債務を請求しない旨を面にした。借用の原本も確認し、私の名を勝にいた経緯は幸自が説した。私は面の控えを受け取り、ようやくい息を吐いた。
原田は最初、私がらなかったことを信じたがらなかったという。彼も万円を貸した側で、返ってこなければ困るのは当然だった。けれど、だからといって私に責任を押しつけていいわけではない。夫が自分で借り、自分で署名を偽ったことを確にしたうえで、返済は幸が続けることになった。
私は原田に度だけ話をした。「私の勤務先へ連絡しないでくださって、ありがとうございました」。原田は「こちらも確認でした」と答えた。私が許したのは、無関係な私を追い詰めないと決めてくれたことだけだった。夫の嘘がなかったことになるわけではないし、原田の貸したが消えるわけでもない。
私は面をクリアファイルに入れ、の取引細と同じ棚へしまった。最初はその棚を見るだけで気分が沈んだが、今はつずつ解決したことを確認できる所になっていた。
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借を作ったのは夫であり、保証にされたのは私だった。を混ぜずに対応したことで、ようやく自分の名を自分のものとして取り戻せた気がした。
その夜、私は最初のメッセージを読み返した。『の午までに話がつかなければ、奥さんの勤務先へ確認の話を入れます』。あの文を見たとき、私は仕事まで失うのではないかと怖かった。けれど実際には、相談し、記録を残し、必な相へ説することで、しずつ問題を切り分けられた。自分の名を守れたことが、何よりきかった。
幸からは『俺のせいで怖いいをさせた。原田への返済は最まで自分でする』と連絡が来た。私は『そうしてください』と返した。以なら、彼の謝罪を受け取るために私も優しい言葉を探しただろう。今はそれをしなくてもいいとえた。責任を取ることは、褒めてもらうための為ではない。
数、松さんがしい通帳ケースを持ってきた。古い布を縫いわせたもので、側にさな根の刺繍がしてある。「財布のに入れておきなさい。なくさないようにね」と笑った。私はそのケースに、しい座の通帳を入れた。夫には暗証番号を教えない。族だからこそ、守るべき境界があると私はっていた。
松さんは帰り際、「幸のこと、許さなくてもいいからね」
と言った。私は驚いて顔をげた。祖母は続けた。「あの子が変わるのは、あの子の仕事。乃ちゃんが幸せになるのは、乃ちゃんの仕事だよ」。私はその言葉を聞き、ずっと胸の奥に残っていたさがし軽くなった。夫の再発を見届ける義務は、私にはないのだ。
その晩、が通帳ケースの根を指さして笑った。陸は横からを伸ばし、で取りいになった。私はケースを棚へしまい、代わりに柔らかいおもちゃを渡した。おのことを考えずに子どもたちと笑えるが、しずつ戻ってきていた。そのことが、どんな謝罪よりも確かな変化にえた。