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"「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘" 第1話

危篤の万円

「ばあちゃんが危篤だから、元に帰るわ。交通費と見で万円ある?」夫の幸がそう言ったのは、双子を産して週目の午だった。私は娘のを抱き、元のベビー布団では息子の陸がようやく眠ったところだった。寝でがぼんやりしていたのに、「万円」という数字だけは妙にはっきり聞こえた。

「松さんが危篤なの? どこの病院?」私はまず祖母の容体を尋ねた。幸は仕事用の鞄をに置き、いかにも疲れたという顔で首を振った。「元の病院。医者も厳しいって。今からけばにうかもしれない」。元といっても、松さんのはここからで分ほどの町にある。

「私も話だけでもしたい。病院の名を教えて」。そう言うと、夫は急にになった。「産なんだから余計なことするなよ。俺が全部やる。だからだけ頼む」。がさくじろぎしたので、私は声を落とした。病院名も分からないまま万円を渡すことには、どうしても抵抗があった。

私は退院してから、まとまった現を持ち歩かないようにしていた。分のミルクやおむつは毎週買いさなければならず、予していなかった医療費もある。万円をせないわけではないが、夫が何に使うのか分からないまま渡せば、子どもたちのための備えを削ることになる。

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松さんの命に関わる話と、を渡すかどうかは、本来別々に確認できるはずだった。

そもそもで分の距なのに、交通費だけで何万円もかかるはずがない。私はそれを指摘したかったが、病気のの話を額の計算だけで否定するのも怖かった。だから、まず病院名と容体を聞こうとしたのだ。もし本当に危ないのなら、私にもできることを考えたかった。

夫の祖母、松さんは歳だ。朝から畑へて、根を両に抱えて坂をるで、妊娠の私にも野菜を届けてくれた。先週の話では「双子の顔を見にくから、寝られるときに寝なさいよ」と笑っていた。急変がないとは言えない。だからこそ、私は自分ので確かめたかった。

「万円はすぐにせない。今は分のミルク代もあるから」。私が答えると、夫の元がゆがんだ。「ばあちゃんの命よりが事なのか。お、護師だろ」。その言い方に、胸の奥がえた。私は護師だからこそ、危篤のの族が病院名も担当医もらないまま、見の額だけ先に決めることに違を覚えたのだ。

「え……嘘だよね?」私はわず言った。夫は「何言ってるんだ」と声を荒らげた。「じゃあ、松さんの携帯に話するね」。私はをベッドに寝かせ、スマートフォンをに取った。幸が歩づく。

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「やめろ。危篤だって言ってるだろ」。私は夫を見ずに番号を押した。「られないなら、それで分かる。まずは確認させて」。通話音が回鳴る、夫は玄関へも戻らず、そのにち尽くしていた。

「もしもし、乃ちゃん?」聞こえたのは、畑でに当たっているような張りのある声だった。「ちょうど根を洗ってたところ。ちゃんと陸くん、元気かい」。私は力が抜け、わず子に座った。夫は携帯の向こうの声を聞くなり、顔から血の気を失った。

「松さん、体調は……丈夫ですか」「何言ってるんだい。朝から畑にて、昼はおかわりまでしたよ」。私は度だけ夫を見た。彼は首を横に振っていたが、何を否定しているのか、もう分からなかった。「幸が、松さんは危篤だって言うんです。今すぐ万円必だって」

話の向こうで、鍋の蓋を置くような音がした。それから松さんが、く、しかしはっきりと言った。「……また、あの子は私をにかけにしたのかい」。私は息をのんだ。『また』という言葉には、私のらない来事が含まれていた。松さんは続けた。「乃ちゃん、は円も渡すんじゃないよ。にも同じことがあったんだ」。

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