"死んだ母を名乗る女" 第12話
者を騙った現留詐取の全証拠
「ですが、お母様のその尊いいを、で踏みにじった者がいたのです」 池田文彦氏の線が、転して氷のように徹なを帯び、玄関の敷居にへたり込んでいる千恵子叔母を射抜いた。
叔母は息を殺し、必に自分のを消そうとするかのようにを縮こまらせていた。 文彦氏が静かな、だが確固たる取りで叔母のへみる。 「志保子さんが再入院されたと聞いたの、私はお見いの品を届けようと、このを訪ねました。その、庭の入れをするフリをしながら現れたのが……坂千恵子さん、あなたでしたね」
叔母の肩がピクリとねがる。 「あなたは私にこう言いました。『姉の癌が再発して、もうくありません。額な先医療と自由診療の抗がん剤を使えば命が助かるかもしれないのに、夫をくした姉には治療費を払う蓄えがないんです。私のような妹がをにして働いても、とても追いつかなくて……』と、ハンカチで目を押さえて涙を流してみせましたね」
「そ……それは……!」 叔母が掠れた声を絞りそうとしたが、文彦氏の威厳に満ちた声がそれを遮った。 「私は志保子さんの恩に報いるため、即座に治療費の支援を申しました。度に額の贈与をえば贈与税の負担がかかるため、百万円の非課税枠を計算し、ヶに度、万円ずつの現留を、志保子さんの名義宛てに直接送ることを約束したのです」
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文彦氏の元から、義親が持参していた業務用のクリアファイルが取りされた。 そこには、過にわたって郵便局から差しされた、現留の受領証のコピーが克に綴じられていた。 総額にして、百万円。 母がくなったも、叔母はその事実を文彦氏に切らせず、者の名を騙って現を懐に入れ続けていたのだ。
「さらに、これを見なさい」 義親がスマートフォンを掲げ、画面を叔母の先へ突きつけた。 再されたのは、先ほどまでこの玄関先で撮されていた、鮮な画だった。 本物の配達員である同僚から「浅沼志保子様宛ての現留」を受け取り、嬉々として『はいはい、私が志保子ですよ』と偽りのサインをき殴り、ハサミで封筒を破いての万円札を数える叔母の姿。 そして、その背で、逃用のスーツケースを抱えて招きしていた川島の姿が、寸分の狂いもなく記録されていた。
「郵便受取の署名偽造、受領権限のない者宛て銭の横領、そして詐欺罪」 義親が淡々と、だが鋭利な刃物のような調で告げる。 「叔母さん。私はこの区の担当者として、あなたが母の名を使って留を騙し取っていた現を、この目で幾度となく目撃し、記録してきました。……言い逃れができるとでもっているのですか?」
「ひっ……!」 叔母は喉を詰まらせ、両でを抱え込んだ。 母が遺した美しい恩返しの絆を、私利私欲のために貪りっていた寄虫の正体が、のに晒された瞬だった。