"死んだ母を名乗る女" 第6話
兄の策謀と偽りの遺言
「お兄ちゃん、画見た!?」 帰りのにび乗った私は、息を乱しながら斗に話をかけた。 クラウドストレージへ自転送された監カメラの映像を、斗もすでに京の自宅で確認していた。
受話器の向こうから、斗の激しい奥歯の噛み締め音が響いてくる。 『ああ……見たよ。信じられないな。まさか本当に根裏に巣っていたとはな。しかも、あの通帳……父さんが母さんの治療費のために遺してくれた、方の座だ。残はほとんど残っていなかったはずだが、あいつは何を企んでいるんだ?』
「池田さんが言っていた現留よ! 誰かが母宛てに定期に現を送っていて、叔母は母に成りすましてそれを受け取り、あの座を使ってマネーロンダリングしているんじゃないかしら!?」 『辻褄がうな。……美咲、絶対に今すぐ警察へ通報して突入するなよ。現犯で取り押さえても、内の法侵入や親族の窃盗は、警察が「民事介入」を盾にして厳罰に処さない能性がある』
「じゃあ、どうするのよ!? あのままあいつを母さんのに居座らせておくなんて、分秒だって耐えられないわ!」 私の叫びに対し、斗は極めて徹な声で告げた。
『あいつが番執着しているものは何だ? ……だろ。の丈にわない借を抱え、定職にも就かず、のに寄することしか能がない女だ。
広告
だからこそ、あいつのその浅ましい欲を利用して、自ら罠の真んに躍りさせる』
斗が提示した作戦は、実に見事な理トラップだった。 それは――【偽の遺言】を餌にした、おびきし作戦だった。
翌、私は叔母の携帯話番号へ、本のショートメールを送信した。 母の葬儀以来、着信拒否されていた番号だったが、ショートメールであれば届く能性があった。 文面は、私の名義でこう作成した。
『千恵子叔母さんへ。実の片付けをしていたところ、仏壇の奥からの母が遺した「公正証遺言の控え」が見つかりました。そこには、叔母さんに対する数百万円単位の遺産分与に関する記述があります。内容を確認していただく必がありますので、至急ご連絡ください』
送信ボタンを押してから、わずか分。 私のスマートフォンが、けたたましい子音を鳴らして震えした。 画面に表示された発信者番号――それは、にわたり方をくらましていた、坂千恵子そのだった。
「もしもし?」 私が極めて事務な声でると、受話器の向こうから、興奮を押し殺しきれない叔母の甲い声がび込んできた。
『あ、美咲ちゃん!? 久しぶりねえ! メール見たわよ! 姉さんの遺言って、本当なの!? いくら、いくら私に遺してくれるっていてあるの!?』
典を持ち逃げした罪悪など、微もじられない顔無恥な声。 私は笑を浮かべながら、受話器に向かって穏やかに告げた。 「ええ、本当ですよ。詳しい内容は話ではお話しできませんので、の午、駅の喫茶『ルノアール』でお会いできませんか?」
『くわ! 絶対にくから、逃げちゃダメよ!』
話が切れた瞬、私はさく息を吐きした。 獲物は、完璧に針をみ込んだ。 だが、これはほんの序のに過ぎなかった。 この、叔母が連れてくる「いもよらぬ共犯者」のが、事態をさらに混沌とした修羅へと加速させることになるのだ。