みかん小説
本棚

"五歳で売られた天才少女、悪意を嗅ぎ分け父を救う" 第2話

油条のりと攫いの

夜がけ、朝がち込める沿いのさな町。 川沿いのゴミ捨てでだらけの麻袋を拾い、え切った体に巻きつけたゆえんは、ふらふらと朝がつの袂(たもと)へと歩みた。 からは、炊きての粥の湯気と、ばしい揚げパン――油条(ヨウティエン)の匂いが漂ってくる。何もにしていない歳の胃袋が、鳴をげるように激しく収縮した。

「お腹、すいたな……」 おはない。盗みをする勇気もない。ゆえんは台の裏の物にしゃがみ込み、ただ漂ってくる匂いを胸いっぱいに吸い込んで空腹を紛らわせようとした。 そんなさなに、台で油条を揚げていた髪の老が気づいた。

「お嬢ちゃん、これ、揚げ損ねて形が崩れちまった油条なんだが……よかったらべな」 老は揚げたてのい油条を、清潔な油に包んで差ししてくれた。 ゆえんはゴクリと唾を呑み込み、首を横に振った。 「おじいちゃん、いらないよ……。おじいちゃんがべて。ゆえんは、匂いを嗅ぐだけでお腹いっぱいになるから……」 「何を言ってるんだい。子供がそんなをするもんじゃない。ほら、べな。おじいちゃんに慮はいらないよ」 温かい油条を掌に押し付けられ、ゆえんの瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。でかぶりつくと、麦の甘みと油のばしさがいっぱいに広がる。

広告

「お嬢ちゃん……そのの傷、体誰にやられたんだい? ひどいことをする奴がいるもんだ……」

老が胸を痛めていたその、背からけたたましい音が響いてきた。

「このクソガキ! 弟を放ったらかして、こんなところまで何しに来たのよ!」 現れたのは、浅黒い肌に吊りがった目つきをした、見らぬ女だった。女はゆえんの襟首を乱暴に掴みげ、周囲の買い物客に向かってわざとらしく声を張りげた。 「く緒に帰るよ! 弟がおがいないって泣き叫んでるんだからね!」

ゆえんは全の毛穴が逆つような悪寒を覚えた。 この女の体から、腐ったゴミと獣の脂が混ざりったような、耐え難い悪臭が漂ってきたからだ。 (くさい……! 私を豚に閉じ込めようとした、あの悪いたちと同じ匂いがする!) ゆえんは本能に悟った。これは、親切な母親のフリをして子供を連れる『攫い』だ。

「あんた、私の何なの? なんで言うことを聞かなきゃいけないの!?」 「何言ってんの、この子は! 母親の顔を忘れたって言うのかい!? ほら、さっさと帰るよ!」 女が無理やり腕を引っ張ろうとした瞬、ゆえんは素く相の懐に潜り込み、女の首のツボ――内関(ないかん)と曲池(きょくち)を、さな親指の先で渾の力で圧迫した。 なぜそんなツボをっているのか、自分でも分からなかった。

広告

ただ、のに閃く直が、そこを押せと命じたのだ。

「ぎゃあああっ!?」 女は首に激痛がったように叫び声をげ、そのに転倒した。 「おじいちゃん! この、ゆえんのお母さんじゃない! 攫いだよ!」 ゆえんの叫びに、台の老が麺棒を構えてち塞がった。 「なんだと!? この女、見かけない顔だとったら! を呼ぶぞ!」 町の々が集まり始めるのを見て、女は毒づきながら逃げっていった。

老は震えるで売のから数枚の幣を取りし、ゆえんの掌に握らせた。 「お嬢ちゃん、く逃げなさい! 駅へって、くのへくんだ。悪いに捕まっちゃいかん!」 「おじいちゃん、ありがとう……! ゆえん、きくなったら、必ず恩返しに来るからね!」 油条の温もりと老の慈を胸に、ゆえんは教えられた鉄の駅へと全速力で駆けした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: