"50人ドタキャンで廃業寸前、そこへ現れた意外な客" 第9話
論破された言い訳
「テ、テツ……! 待ってくれよ! 俺が悪かったって言ってるじゃないか!」
追いつめられた真治は、なりふり構わずテツの腕に縋りつこうとした。しかし、テツの頑丈な腕は微だにせず、たくそのを振り払った。
「おは『悪かった』なんて言も言っていない。ただ『の予約を入れてやるから、プロレス団体への添えをしろ』と取引を持ちかけているだけだ。それを世では謝罪とは言わない。ただの自己保だ」
「な……っ!」
「先週の曜、おは何と言った?『廃業したとったからバーベキューをしている』『チラシにキャンセル料がいていないから円も払わない』『記載漏れはおのミスだ』……そうやってせせら笑いながら、話を方に切ったよな?」
テツの静かな追及に、真治は喉をカラカラに鳴らして言い訳を並べてた。
「だ、だってそうじゃないか! ビジネスの世界では契約の記載がすべてだろ! 規約にいてないペナルティをから請求する方が筋違いだ! 俺は社会の常識に従ったまでだ!」
その見苦しい喚き声に対し、列のからの初老の男性が静かに歩みてきた。企業の総務部の、落ち着いたなりの常連客だった。
「おい、若い。君はビジネスの常識を随分と勘違いしているようだね」
「あ? あんた誰だよ!」
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「私は企業の契約管理を担当している者だがね。における規模の宴会予約は、民法、諾成契約に基づく確な役務提供のだ。面にキャンセルポリシーが記されていなくとも、直の客都による方な解約によってじた損害——仕入れ代や逸失利益は、債務履または法為として全額賠償の対象になるのが判例の常識だよ」
初老の男性は、鏡の奥から真治を徹に見据えた。
「ましてや、君はキャンセルした点で別の所でバーベキューをしていたそうじゃないか。最初から予約、あるいは履のがないまま予約を入れていたと見なされれば、詐欺な業務妨害すら問われかねない悪質な背信為だ。『記載漏れだから払わなくていい』などという屁理屈は、社会通、ただの破廉恥なき直りに過ぎんよ」
周囲の客たちから、「そうだ!」「その通りだ!」と賛同の声と拍が湧き起こった。
真治は全から血の気が引き、言葉を失ってをパクパクとかすことしかできなかった。
「それにね、君」男性はため息をついた。「ビジネスの根底にあるのは『信用』だ。相がミスをしたとったらそこにつけ込み、利益を押し付けて笑うようなと、体誰がきな仕事を共にしたいとうかね? 君が失ったのはキャンセル料の数万円じゃない。
としての信用そのものだよ」
「う……ぐ……」
ぐうの音もない正論の連打に、真治のがガクガクと震えた。
「帰れ、真治」
テツが静かに簾のを指差した。
「これ以、うちのので騒ぎてるなら、威力業務妨害で警察に通報する。おがをげるべき相は俺じゃない。おのその腐った仕事ぶりにを尽かした、おの会社のと、取引先の方々だ」
「て、テツ……頼むよ……! これじゃ俺、会社をクビになっちまうんだよ……!」
泣き崩れそうになる真治を、常連客たちがたい壁となって押し返した。
夕が濃くなる、真治は群衆の笑と罵声を背に浴びながら、々の体で町のを逃げしていくしかなかった。