"50人ドタキャンで廃業寸前、そこへ現れた意外な客" 第8話
のの恥さらし
「テツ! おいテツ、待てって言ってるだろ!」
夕暮れの町、百を超える列が歩を埋め尽くす、真治はなりふり構わず波をかき分け、簾を掛け終えたばかりのテツのへと割り込んだ。額には脂汗が滲み、級ブランドのネクタイは斜めに曲がっている。先週まで見せていたあの勝ち誇ったような余裕は、どこにも残っていなかった。
「ちょっとあんた、割り込むなよ!」
「みんな何もから並んでるんだぞ!」
列の方にいたプロレスファンたちが斉にをわにし、声を浴びせる。しかし、真治は背広の裾を払うと、並んでいる客たちを馬鹿にしたような線で瞥し、テツに向かって声を張りげた。
「テツ、話でも言っただろ! 俺だよ、真治だ! 先週のことはちょっとしたき違いだったんだよ。だからさ、俺がもう度、今夜の枠を正規の値段で買ってやるって言いに来たんだ。おだって商売なら、こんな狭いでちまちま銭を稼ぐより、まとまった団体の売が欲しいに決まってるだろ? これで打ちにしてくれよ!」
真治の声は、周囲の静まり返った空気のになほど響き渡った。
テツは掛けていた簾からゆっくりとをし、腕組みをして真治を正面から見据えた。その瞳には、りや怨嗟のはなく、ただゴミ箱の底に沈んだ腐敗物を見るかのような、完全な淡さが宿っていた。
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「……真治。お、さっきから何を言ってるんだ?」
「だから、助けてやるって言ってんだよ! お、会社辞めてからに困ってただろ? 親父さんの入院費だってあるはずだ。俺が元の職のコネを使って、定期に規模の宴会を回してやるって約束する。その代わり、プロレスの神会に本話を入れてくれ。『真治とは完全に解しました、素らしい友です』ってな!」
真治は勝ち誇ったように、懐から帳を取りして見せた。自分が施しを与えてやっている、恩恵を施してやっているという浅ましい表が、その引きつった笑みに張り付いていた。
その瞬、列の先にいた柄な男性ファンが、ハッと息を呑んで真治の顔を指差した。
「おい……待てよ。こいつの顔、どこかで見たぞ!」
「え? 誰ですか?」
「先週の曜、神会やビル選たちがSNSで言ってたじゃないか!『恩らずのドタキャン野郎に潰されかけた名を、俺たちが奇跡に救った』って! その元凶の、イベント会社の営業マンって……まさか、こいつか!?」
ザワッと、列全体に凄まじいりの波が広がった。
「なんだと!? こいつが、将を泣かせようとしたあのクズか!」
「始分にキャンセルして、バーベキューやってたって奴だろ!」
「神会の聖巡礼投稿で読んだぞ! キャンセル料も踏み倒したらしいじゃねえか!」
百以の鋭い線が、斉に真治の全へと突き刺さった。
真治は顔を真っ青に染め、ずさりした。
「な、なんだよおら……! 関係ない部者がを挟むな! これは俺とテツの、昔からのツレ同士の問題だろ!」
「部者だと?」
テツのく、鳴りのような声がに響いた。
「真治。ここに並んでくれているたちはな、俺の料理を、うちのの簾をして、くからを運んでくれた切なお客様だ。おのように、の仕込みを嘲笑い、のきる糧を屑同然に扱う奴とは、最初からとしての格が違うんだよ」
テツは歩へ踏みし、真治の目のでピシャリと言い放った。
「おの予約なんざ、輪際切受け付けない。今すぐこのから消えろ。度とうちの敷居を跨ぐな」