"50人ドタキャンで廃業寸前、そこへ現れた意外な客" 第4話
空っぽの鍋と黒い
厨は、まさに戦と化した。
ビールのサーバーは休むもなくレバーが引かれ、ジョッキが次々と空になっていく。
「ぷはーっ! 試ののビールは臓腑に染みるぜ!」
「将、このヒラマサの刺、信じられないくらい脂が乗ってて旨いぞ! 鹿児島産か!?」
「もつ煮込みおかわり! 盛りで杯追加だ!」
レスラーたちの欲は、テツの像を遥かに絶していた。として用していた唐揚げのはわずか分で平らげられ、百本の焼き鳥は次々と串から肉がされて巨なのへと吸い込まれていった。鍋の底が見え始めると、テツは蔵庫に残っていた豚バラ肉とキャベツを放り込み、即興で巨な塩野菜炒めを作りげた。
「旨い! 将、腕がいいな!」
「こんなに旨い飯をわせてくれるが、楽園のくにあったとはらなかったぜ!」
がりの座敷では、若いレスラーたちが皿を両に抱えて米をかき込み、ベテラン勢が満そうに杯を傾けている。さっきまで絶望に暮れていたのが、笑顔と歓声で満ち溢れていた。
宴も盤を過ぎた頃、団体のトップである『プロレス』の会・神(こうづき)が、グラスを片にふらりとカウンターへやってきた。
髪交じりの髪に、彫りのい厳格な顔ち。
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現役代は『闘将』と呼ばれ、現は数々のビッグマッチを成功させているプロレス界のドンだった。
「将、今夜は本当に助かったよ」
神会は、カウンター越しにテツにビールを注いだ。
「うちの米マネージャーのミスで、選たちをに迷わせるところだった。しかし……議だな。び込みで入って、これだけの料理が寸分狂わず用されていたなんて、まるで最初から々が来ることが分かっていたかのようだ」
神会の鋭いが、テツの顔をじっと見つめた。
テツは苦笑いを浮かべ、ジョッキにを添えながらをげた。
「……実は、会。お恥ずかしい話なんですが」
テツは、始分に元同僚の真治から受けたのドタキャンの全貌を、包み隠さず打ちけた。親から引き継いだが廃業寸だったこと、仲の応援だと信じて全財産を叩いて仕込んだこと、そして『廃業したとったからバーベキューをしている』と嘲笑われ、キャンセル料すら踏み倒されたこと。
話を静かに聞いていた神会の顔から、次第に笑みが消えていった。
グラスを握る巨な拳に、青筋がピキピキと浮きがる。
「……元同僚だと? そんな恩義も仁義もらんが、この世にいるのか」
神会のく唸るような声に、隣に座っていたベテランレスラーたちもピタリと箸を止めた。
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「そいつの名は、何という」
「え……いや、もう過ぎたことですし、会たちのおかげで料理も全部無駄にならずに済みましたから……」
「将、誤魔化すな。俺たちプロレスラーはな、受けた恩は倍にして返し、舐められた落としはリングのでキッチリ清算するのが掟だ。その男の名を聞かせてもらおう」
神会の凄まじい気迫に押され、テツはさく息を呑んだ。
「……真治です。『プロモ・エンターテインメント』というイベント企画会社に勤めている、真治という男です」
その名がた瞬、神会の横にいた広報部の顔が変わった。
「会……プロモ・エンターテインメントの真治といえば、来週のうちの最のビッグマッチ、『本武館グランドファイナル』の会設営と音響をに請け負っている、メインの営業担当者ですよ」
静まり返る内。
神会はゆっくりとグラスを置き、気なほど静かに元を歪めた。
「……ほう。うちの武館の担当が、その真治という男か」
運命の歯が、誰も予しなかった方向へと、音をてて噛みい始めた瞬だった。