みかん小説
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"一年後の請求書" 第2話

論破王気取りの屁理屈

由里さんを笑顔で見送った、俺はトレーを片に、を決して奥のブースへと歩み寄った。 テーブルのは、まるで葉原のジャンクショップのような様だった。 何本もの充ケーブルが絡まりい、空になった無料のガラスコップがつ、結でテーブルの無垢材を濡らしている。 俺は咳払いをつし、極めて穏やかなトーンで声をかけた。

「向さん、々よろしいでしょうか」 「……あ? 何すか、今いいところなんだけど」 は画面から目をそうともせず、コントローラーをガチャガチャと激しく操作しながら、嫌そうに舌打ちを鳴らした。 「当のご利用についてお願いがございます。からすでにが経過しております。変申し訳ありませんが、当はコワーキングスペースやゲームセンターではございません。のお客様もお待ちですので、追加のオーダーをいただけないようでしたら、そろそろお席をお譲りいただきたいのですが」

するとは、袈裟なため息をついてヘッドホンをすと、馬鹿にしたような笑いを浮かべて俺を見げてきた。 「はあ? 何をもって『』って言ってるわけですか? 客観な定義を教えてもらえます?」 「……へ?」 「何以がで、何杯以の注文で何分滞できるのか、こののどこに記されてるんですか? メニュー表にも、入の板にも、利用制限の規約なんて言もいてないですよね?」

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「そ、それは……常識というか、良識の範囲でお願いしていることでして……」 俺が言葉を詰まらせると、は待ってましたとばかりにニヤリと角を吊りげた。 「良識? それってあなたの主観ですよね? そんな曖昧な論で客を追いそうとするの、やめてもらえません? 俺にとっては、お気に入りのカフェで好きなだけゲームに没することこそが最のなんですよ。主の勝な価値観で、顧客の『様性』を邪魔しないでくれませんかねえ」

「様性……? いや、しかし、のお客様が座れずに帰られて――」 「それ、俺のせいですか? 席数がりないなら、側のキャパシティ設計のミスでしょ」 は子にもたれかかり、腕を組んでペラペラとで捲しててきた。 ネットの掲示板や画サイトで聞きかじったような、典型な『論破系インフルエンサー』の模倣。 相の揚げを取り、権利ばかりを主張して義務を放棄する、最も厄介なタイプだ。

「いいですか? 注文を完した点で、俺とのには『所と設備を利用する契約』が成してるわけです。客にはカフェの空とWi-Fi、コンセントを利用する正当な権利があり、側にはそれを提供する義務がある。それを途で追いすなんて、な債務履ですよ。……もしこれ以しつこく退を迫るなら、この部始終をSNSに画付きでアップしますけど、いいんですか? 『個経営のカフェが客の様性を否定し、方に追いし』って拡散されたら、舗なんて瞬で炎して潰れますよ?」

はスマホのカメラを俺に向け、ニヤニヤと嘲笑った。 「はい、論破。毎ゲームやり放題、最っすわ。あ、のおかわりお願いしまーす」

カチン、とので何かが切れる音がした。 だが、ここで鳴り散らして胸ぐらを掴めば、それこそ奴のう壺だ。スマホで切り抜き画を撮られ、ネットの玩具にされれば、丹精込めてちげたこのは瞬でに塗れる。 俺はぎゅっと拳を握りしめ、営業用の張り付いた笑みを浮かべた。 「……承いたしました。ごゆっくりどうぞ」 カウンターへ戻る背に、の「勝ったぜw」という仲へのボイスチャットが突き刺さる。 (見てろよ、クソガキ……。法律と権利がそんなに好きなら、本物のルールってやつを教えてやる) りを通り越して、俺の脳内は氷のように冴え渡っていた。

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