"時給1111円で高齢者5人を雇った結果" 第9話
倍の
「今の倍をします」
塩田はそう言った。
俺はわず彼を見た。
うちでに払っているは1111円から始まった。売りげが改善してからしずつ当を増やしてはいたが、チェーンの提示額には到底届かない。
「もちろん全員です」
塩田は続ける。
「勤務も希望にわせます。以のような清掃ではなく、それぞれ得な仕事をしてもらうことも本部に認めさせます」
条件だけ見れば、断る理由はない。
俺は黙った。
引き止める資格はないとった。
にはの活がある。
「嬉しいねえ」
桃子さんが言った。
塩田の顔がるくなる。
しかし桃子さんは続けた。
「私たちのことを見直して、そこまで言ってくれたのは本当に嬉しい」
「では――」
「でも、戻らないわ」
塩田の表が止まった。
黒田さんも言う。
「悪いな」
「なぜです?」
塩田の声がしきくなる。
「料ですよ。こちらの倍です。皆さんだっておは必でしょう?」
梅原さんが困ったように笑った。
「そりゃ必よ。でも、おだけで働いてるわけじゃないもの」
「そんな綺麗事――」
「綺麗事じゃない」
青さんが遮った。
「ハイパーラーメンにいた頃も、わしは何度も庫の置き方を変えたらどうかと言った。毎週同じ材料が余っていたからな」
塩田は黙る。
「でも『本部の配置基準だから触らないでください』と言われた」
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黒田さんも続けた。
「俺も炒飯やれるって言ったよな」
「管理と事故防止の問題で――」
「それ自体は分かる。だが、できるか試してもくれなかった」
桜さんは静かに言った。
「俺はやの周りののことなら詳しかった。でもハイパーラーメンは専業者に全部頼んでた。別にそれが悪いわけじゃない。ただ、俺たちにできることなんか最初から興なかっただろ」
塩田の顔から血の気が引いていく。
最に桃子さんが言った。
「私たち、あそこでも働く気はあったのよ」
「だったら、なぜここでは――」
桃子さんは俺を指した。
「は、最初のに『何ができますか』とも聞かなかった」
俺は焦った。
「いや、それ褒められてます?」
「褒めてるわよ」
みんなが笑った。
桃子さんは続ける。
「『好きにいてください』って言ったの。それで私たちが何かやったら、『じゃあ、それお願いします』って任せてくれた」
塩田は俺を見る。
俺は何も言わなかった。
偉いことをした覚えはない。
がりなかっただけだ。
けれど黒田さんが、俺の肩を軽く叩いた。
「な、期待されるととけるんだよ」
その言葉に、塩田は俯いた。
しばらくして彼はちがった。
「……分かりました」
帰り際。
俺は声をかけた。
「塩田さん」
彼が振り返る。
「が戻らなくても、はて直せますよ」
「慰めですか?」
「違います。今いるたちにも、得なことがあるんじゃないですか」
塩田は答えなかった。
扉が閉まる。
その夜、俺はに言った。
「本当に良かったんですか?」
黒田さんが笑った。
「倍の料を断ったんだから、その分しっかり働かせてもらうぞ」
ところが翌。
ハイパーラーメンでは、別の問題が起き始めた。
若いアルバイトが、またと辞めていったのだ。
そして塩田は、追い詰められていく。