"時給1111円で高齢者5人を雇った結果" 第2話
誰に何ができるのか
翌朝半。
準備のためへ入ると、はすでに入のに並んでいた。
「すぎません?」
俺が笑うと、最の青誠さんが腕計を見た。
「仕事初により遅く来るわけにはいかんだろ」
青さんは歳。以は自部品で、産管理を以担当していたという。真面目そうな角刈りで、話すときはいつも背筋が伸びている。
残るにも、改めて自己紹介をしてもらった。
黒田源さん、歳。元製鉄所勤務。
桜正夫さん、歳。元タクシー運転。
梅原澄子さん、歳。、縫製で働いていた。
佐伯桃子さん、歳。元学教師。
ハイパーラーメンでは、ともほとんど同じ仕事をさせられていたらしい。テーブル拭き、器げ、清掃。それ以のことをしようとすると、「マニュアルにないことはしなくていい」と止められたという。
俺はし考えた。
「じゃあ、今は仕事を決めません」
「決めんのか?」
「はい。まず好きにいてください。危ないことと、勝にを変えることだけしなければ丈夫です」
はきょとんとした。
「、それでええの?」
「誰に何が向いているか、俺もまだ分からないんです。だったら先に働いてもらった方がいでしょう」
からほどは、いつも通り暇だった。
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ところが半ごろ、桃子さんがのへた。
「何してるんですか?」
「差しがくなってきたでしょう。で待つがいたら暑いとって」
「いや、今は列なんて――」
言い終えるに、桃子さんはの向こうにいた買い物帰りの女性へ声をかけた。
「本さん、お久しぶり。腰はどう?」
「あら桃ちゃん。ここで働き始めたの?」
はそのまま話し始め、分には女性がへ入ってきた。
さらに昼になると、桃子さんの元教え子だという会社員が、所の主婦が、齢の夫婦が組やってきた。
たまたまだとっていた。
しかし桃子さんは客の名どころか、「に辛いものが苦と言っていた」「膝が悪いから入側が楽」「子どもはネギ抜きが好き」といったことまで覚えていた。
「、番のお父さん、麺をし柔らかめにしてあげて」
「はい」
言われた通りにすと、老は驚いた顔をした。
「よく覚えとったな」
桃子さんは笑う。
「忘れるわけないでしょ」
昼を過ぎると、今度は梅原さんが厨をじっと見ていた。
「。餃子、凍なの?」
「ええ。父の頃は作りだったんですけど、じゃ無理で」
「包むだけなら、私やってみようか?」
試しに皮と餡を渡してみた。
俺が個包むに、梅原さんは個作った。
しかも形が全部同じだった。
「っ……」
「縫製にいたのよ。指先をかす仕事なら、まだ若い子には負けないわ」
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その横で黒田さんが、きな華鍋を眺めている。
「その鍋、使わせてもらってもええか?」
「いですよ」
「製鉄所で何を持っとったとってる」
黒田さんは華鍋を片で持ちげた。
夕方、試作品として作ってもらった炒飯をべた瞬、俺は箸を止めた。
米粒が粒ずつをまとい、卵と油がく絡んでいる。
「……うまい」
黒田さんは照れたようにをかいた。
「を見る仕事だけはかったからな」
俺はを見回した。
ハイパーラーメンでは、彼らは「械についていけない齢者」だった。
けれど、もしかしたらそれは、見る側がつの物差ししか持っていなかっただけではないのか。
そして閉、青さんが枚のを俺のに置いた。
「。このな、料理より先に直した方がいいところがあるぞ」
そこには、俺が度も考えたことのなかった数字がびっしりと並んでいた。