"時給1111円で高齢者5人を雇った結果" 第1話
閉寸のに来た
「なんとかして、客を増やさないとな……」
午を過ぎても、カウンターに座っている客はだけだった。
俺――赤坂は、厨の奥から客席を眺め、さくため息をついた。父から引き継いだ「らーめん」は、駅商で以続いてきただ。昔は昼になるとまで列ができたらしいが、父がくなって俺が継いでから、売りげはしずつ落ち続けていた。
原因は分かっている。
駅の反対側に、全国チェーンの「ハイパーラーメン」ができたのだ。
醤油ラーメン百円。セットメニューも豊富で、注文はタブレット、会計は自精算。広告費も員も、俺のような個とは桁が違う。だけなら負けていないつもりだったが、「わざわざ古いにく理由」が客にはなくなっていた。
定休の曜、俺は偵察も兼ねてハイパーラーメンへった。
内は満席だった。若い員がタブレットの説をし、厨では械が定ので麺を茹で、自炒飯がぐるぐる回っている。料理はい。値段もい。だって分うまい。
「そりゃ、うちが勝てるわけないか」
独り言をこぼしたとき、スーツ姿の男がこちらを見た。
胸の名札には「 塩田」とある。
「おや。らーめんのさんじゃありませんか」
「どうも」
「い、お疲れさまでした」
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俺は箸を止めた。
「……何がお疲れさまなんです?」
「あ、失礼。最いつを通ってもお客さんがないものですから。てっきり閉されるのかと」
塩田は申し訳なさそうな顔を作っていたが、元にはわずかな笑みがあった。
俺は何も言わず、残っていたラーメンをすすった。
悔しかった。
だが、客が来ないのは事実だ。
そのの夜、を閉めようとしていたときだった。
「こんばんは」
引き戸の向こうに、の男女がっていた。
全員、代半から代くらいに見える。
「あれ?」
どこかで見た顔だった。
すぐにいした。ハイパーラーメンで何度か見かけた齢のパート従業員たちだ。昼の混雑、注文を聞いたり、テーブルを片付けたりしていた。
「すみません。今はもう閉で――」
「いや、客じゃないんだ」
先の髪の男がをげた。
「わしら、ここで働かせてもらえんか?」
俺はを疑った。
話を聞くと、ハイパーラーメンでは翌から注文システムを全面に変更し、スマートフォンのアプリや型タブレットをにした営業へ切り替える予定だという。
それに伴い、は契約を更されなかった。
「正直に言われたよ。これからは若いにしたいって」
女性のが苦笑した。
「械を覚えるのが遅いのは事実だから仕方ない。でもねえ、まだ体はくのよ」
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別の男性も頷いた。
「働かずににおっても、朝からテレビを見るくらいしかないからな」
俺はの顔を順番に見た。
雇ってやりたい。
そうった。
だが俺のは、助けができるほど余裕のあるではない。
「正直に言います」
の表が固くなる。
「うちも経営が厳しいです。い料はせません」
俺は卓を叩き、今の売りげで払えるぎりぎりの額をした。
「は、1111円。それでもよければ」
しばらく沈黙があった。
断られて当然だとった。
ところがは顔を見わせると、ほぼ同に笑った。
「働かせてくれるだけで分だよ」
「本当に?」
「こっちが頼みに来たんだもの」
「じゃあ――」
俺はちがった。
「全員、採用します」
その瞬、の顔がぱっとるくなった。
俺はまだらなかった。
その雇ったが、単なる「齢のパート」ではなかったことを。
そして俺が潰れかけので拾ったのが、とんでもないの宝だったことを。