"110億円を相続した妻を捨てた夫――30億円の誤算" 第7話
の宣告と最の蜘蛛の糸
曜の午。
昨の回目の渡りを受け、ゴーダプレシジョンの本社には、売掛の回収を求める取引先の社員や請けの職たちが殺到し、号がび交っていた。
そんな、完全に正気を失った達也と、ボロボロのコートを羽織った義母のかずは、蜘蛛の糸にすがるようないで、メガバンク本の特別応接へと転がり込んでいた。
応接の防犯カメラと集音マイクのデータが、神堂タワーの総帥に設置された型モニターへリアルタイムで継されている。私は純の総帥章を胸に、塚部と先を従え、画面のでガタガタと震える親子の姿を然と見ろしていた。
応接の扉がき、メガバンクの融資統括部が、氷のような表を崩さずに入してきた。
「ぶ、部! お待ちしておりました!」
達也がからいがるような勢いでちがり、部の元へ縋り付こうとした。
「頼みます! 座の凍結を解除してください! 何かの違いなんです! 俺は毎、きちんと利息を払ってきたじゃないですか! 俺の経営腕を認めて、億円もの融資枠をしてくれていたはずだ!」
かずも髪を振り乱し、涙をボロボロとこぼしながら叫んだ。
「そうですよ! うちの達也は派な経営者なんです! 取引先の社令嬢と再婚して、すぐにて直しますから! お願いですから会社を元に戻してください!」
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の見苦しい願に対し、融資部は着席すら促さず、ゴミを見るような徹な線を投げろした。
「郷田さん。あなた、まだそんな寝言を言っているのですか」
「え……?」
「当のようなメガバンクが、何の担保も持たない方の企業に対し、あなたの経営腕などという確かなものを信用して億円もの特別枠をすと、本気でっていたのですか?」
部の容赦のない言葉に、達也のきが凍りついた。
「な、何を言っているんですか……? 担保なんて、俺は差し入れてない……」
「あなたがらないのも無理はありません。今まで当が貴社を支えていたのは、ただつの、絶対な信用によるものです」
融資部は元の黒革のファイルをパチンとき、そのに綴られた類を突きつけた。
「貴社の億円の融資枠を全額保証していたのは、先くなられた、世界最級の財閥・神堂グループ最顧問の個預です」
「し……神堂グループ……!?」
達也の喉から、ヒュッと息が引きちぎれるような音が漏れた。
「どうして……そんなのの財閥のトップが、俺の会社なんかに……」
「当たりがございませんか? 最顧問がなぜ、赤字続きの貴社に莫な担保を差しし続けていたのか、ご自の胸にを当ててよく考えてみることですね」
融資部は笑を浮かべ、最の撃を叩き込んだ。
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「先週、その最顧問の遺産百億円を正式に継承された『総帥』が、貴社に対する信用保証を即全額解除されたのです。当は規程通りにいただけに過ぎません」
「ひゃ、百億……総帥……!?」
かずが目を剥き、ソファの肘掛けに倒れ込んだ。達也はに膝をつき、額を絨毯に擦り付けながら絶叫した。
「頼みます! その総帥様に取り次いでください! 誤解を解かなければならないんです! 俺が直接会ってお願いすれば、きっと保証を戻してくれるはずだ!」
「当が利きをすることはありません」融資部は然と背を向けた。「どうしてもお会いしたいのなら、町にある神堂ホールディングスタワーの最階、総帥へ直接向くことですね。もっとも、会っていただけるかどうかは分かりませんが」
部はそれだけを言い残し、瞥もくれることなく応接をてった。
取り残された達也とかずは、茫然自失のままにへたり込んでいた。しかし、数分、達也の濁った瞳に、狂気じみたが宿った。
「母さん……くぞ! 神堂タワーだ!」
「え、ええ……! そうね、直接頼み込めば、きっと分かってくれるわよね……!」
はまだ、自分たちが無文で追いした「役たずの妻」の正体にも、自らの犯した罪のさにも気づいていなかった。ただ、会社を延命させ、自らの虚栄を守るためだけに、神堂タワーという名の断台へ向かって、自らので歩み始めたのだ。
画面を見届けていた私は、静かにちがった。
「先、階のエントランス警備へ指示を。郷田達也とかずの名が到着次第、切の事をかさず、この最階の総帥へ通しなさい」
「承いたしました」
私は胸元の純の総帥章を指先でなぞり、たく澄み渡ったの空を見つめた。
台はった。
千万円のために百億円を捨てた愚者たちに、真実という名の絶対零度の鉄槌をすが、ついに訪れようとしていた。