"5000万円の新居に義両親が無断で引っ越し――夫の嘘" 第18話
便箋枚の遅すぎた懺悔
婚届が正式に受理され、戸籍が旧姓へと戻ってからヶが過ぎた、の肌寒い夕暮れ。 マンション階の集ポストをけると、チラシや費の請求に混じって、見慣れない震える跡で私の旧姓がかれた、通のい封が入っていた。
差の欄には、さな文字で『藤本千鶴』とあった。 義母からのだった。
瞬、封せずにそのままゴミ箱へ捨てようかと指が止まった。 また「息子がだ」というみ言か、あるいは「老の面倒を見てくれ」という図々しい願ではないかという警戒がをもたげたからだ。 だが、私はを決して部へ持ち帰り、ペーパーナイフで封を切った。 からてきたのは、いの便箋が枚だけだった。
『彩佳さんへ。 突然のお、本当に申し訳ありません。このは、健太との復縁をお願いするためでも、言い訳をするためでもありません。ただ、私のから、どうしても謝罪を伝えたくてペンを執りました』
丁寧な、しかし何度もき直して涙で滲んだような文字が並んでいた。
『あの、私は健太の「彩佳さんもんでいる」という言葉を信じ切って、ずうずうしくもトラックで押し掛けました。でも、今なら分かります。なぜ私が、引越しのに度もあなたに直接話をしなかったのか。
広告
……それは、健太を信じていたからではありませんでした。 その話が、私にとってあまりにも都が良かったからです。 息子の嫁が広い居を提供してくれて、老の面倒も見てくれる。そんなのような話が本当であってほしいと願うあまり、私は「確認して断られること」から逃げていたのです』
便箋を握る指先に、しだけ力が入った。
『私はあなたに「親孝は当然でしょう」と言いました。でもあれは、親孝という美しい言葉を隠れ蓑にして、自分の老のを、番のいあなたに力づくで押し付けただけでした。……直子から徹底に叱られ、夫からも「恥をれ」と突き放され、きりでダンボールに囲まれた古いで過ごすで、自分がどれほど浅ましく、残酷なだったかをいりました。 私の欲のせいで、の結婚を壊してしまい、本当に……本当に取り返しのつかないことをしました。どうか、お許しくださいとは言えません。ただ、これからのあなたのが幸せであることを、から祈っております』
は、震える署名で締めくくられていた。 私は便箋をゆっくりと畳み、机のに置いた。 りは、すでに消えっていた。 そこにあったのは、己のさに負けての尊厳を奪おうとし、結果としてすべてを失った、のれな老婆の姿だった。
私は机に向かい、枚の簡潔なハガキに、万で数だけらせた。
『お、拝読いたしました。ご自の過ちを認められたこと、真摯に受け止めます。私と健太さんの結論は変わりませんが、どうぞお体を切にお過ごしください』
過をなじる言葉も、復縁を匂わせる言葉も切排除した、完全なる決別の返信。 翌朝、駅のポストにそのハガキを投函した、私とあの族を繋いでいた最の見えない糸が、プツリと静かに断ち切られたのをじた。