みかん小説
本棚

"昭和39年、給食費泥棒にされた少女" 第10話

が隠した取引

調査がむにつれ、昭の学会計には、複数の問題があったことがらかになった。

第に、実際の数よりい数で補助が請求されていた。

第に、学の共同炊事への支が、実際の活内容とっていなかった。

第に、寄付の部が品商会へ支払われ、その使途を確認できる資料がしていた。

私は、さんや好さんと協力し、類を系列に並べ直した。

そので、な枚が見つかった。

昭付の『材料納入契約変更』だった。

そこには、品商会が学への納入数を増やすことが記されていた。

しかし、増加した分は学のへ届けるのではなく、共同炊事向けに処理することになっている。

私は、その類を見て疑問にった。

なぜ、共同炊事への材を、学の通常と同じ会計で扱ったのだろう。

さらに調べると、共同炊事の運営主体は、独した団体として届けられていなかった。

実質には、学と品商会が管理していたのだ。

つまり、学側が数を増やして申請し、業者がそれに応じた納品を作成する。

そして、実際の納品との差額を別の会計へ回す。

そういう仕組みだった能性がい。

私は、当の品商会の元経理担当者を探した。

広告

会社はすでに廃業していたが、元従業員のが隣県にんでいることが分かった。

名は滝川修。

歳を超えていたが、記憶はしっかりしていた。

私は、さんと緒に訪ねた。

滝川さんは、資料を見たとたん、顔を曇らせた。

「まだ、こんなものが残っていたんですか」

私は事を説した。

滝川さんは、しばらく黙っていた。

そして、ゆっくり話し始めた。

「学のの仕事は、会社にとってきな取引でした」

品商会は、の学や施設へ材を納めていた。

杉本と庭社は、古くからのりいだったという。

「昭ごろから、学への納入数が自然に増えました」

「理由は聞きましたか」

「共同炊事へも届けるからだと説されました」

「実際には?」

「私は帳簿をつけるだけでしたから、全部は分かりません。ただ、現の者から、数がわないという話は聞いていました」

私は、好さんの記録を見せた。

滝川さんはうなずいた。

「そうです。実際に学へ届いた数は、こちらにい」

「では、請求にかれた残りの分は?」

滝川さんは、し考えた。

「会社の内部では、別の費目で処理していました」

「どんな費目ですか」

「共同炊事の運営費、学への協力費、それから……」

そこで言葉を止めた。

私は待った。

「先の指示による特別支です」

私は帳にいた。

広告

「特別支?」

「はい。庭社は、学のために使うだと言っていました」

「何に使われたんでしょう」

「そこまではりません。ただ、現で処理されることがありました」

私は滝川さんを見た。

「そのおは、先へ渡されていたんですか」

「部は、そうだったといます」

滝川さんは、古い帳簿の写しを確認しながら話した。

「私は、社から指示されたとおりに記帳していました。今えば、おかしいことがたくさんありました」

私は尋ねた。

「昭、岸田子という児童が費を盗んだとされたことをごじですか」

滝川さんは、しばらく考えた。

「聞いたことがあります」

「そのころ、学の会計で何か問題があったんでしょうか」

「好さんという調理員の方が、納入数がおかしいと申したと聞いています」

私はうなずいた。

「その直に、私は棒とされました」

滝川さんは驚いた顔をした。

「あなたが、その子だったんですか」

「はい」

彼はいあいだ黙っていた。

やがて、くをげた。

「申し訳ありません。私たちが、ちゃんと調べるべきでした」

私はすぐには答えられなかった。

また、あのころのが謝っている。

けれど、私が必としているのは、謝罪だけではない。

私は、事実をつずつ確かめたかった。

その、滝川さんは、自分の記憶を理して面にしてくれた。

当の会社でわれていた会計処理。

と社の関係。

そして、学の納入数に疑問があったこと。

私はその記録を、町の調査担当者へ提した。

数週、調査の報告がされた。

昭度の学会計には、実際の提供数と請求数の致が認められた。

共同炊事への支についても、分な裏づけが確認できなかった。

寄付の扱いにも、会計の問題があった。

ただし、以が経過しているため、具体な額のすべてを確定することは難しいとされた。

私は、その報告を読んで複雑な気持ちになった。

正があった能性はい。

けれど、当の責任者はすでにくなっている。

法な責任を問うことにも、の壁がある。

それでも、記録に残すはある。

私は、そう考えることにした。

あるの午、森先から再び話があった。

「子さん。品の方に会ったそうですね」

「はい」

「では、もう分かったでしょう」

「何がですか」

先は静かに言った。

「杉本と庭社が、学の会計をどう扱っていたのか」

私は答えた。

「ある程度は分かりました。でも、まだつ分からないことがあります」

「何でしょう」

「どうして、私だったんですか」

先は黙った。

「で数字が違うと言った子どもなら、ほかにもいたかもしれません。

なぜ、私を棒にして転させたんですか」

い沈黙のあと、森先は答えた。

「あなたは、数字を覚えるのが得だったでしょう」

私は驚いた。

「はい」

「で見た数の違いを、翌、教でも話したんです」

私はいした。

。

私は文ちゃんに、の納品にいてあった数字を話した。

百。

百。

どうして違うんだろう。

ただ、それだけだった。

森先は続けた。

「文さんから話を聞いたあと、私は先に報告しました」

「それで?」

「先は、あなたがほかのにも話すことを恐れました」

私は息を止めた。

「あなたのお父さんは、納得できないことがあると、何度でも学へ来るでした」

先は言った。

「先は、それをっていたんです」

私は父の姿をいした。

職員で、何度も説を求めた父。

娘を棒にしないでほしいと頼んだ父。

そんな父を、は最初から警戒していた。

「だから、私を棒に?」

「はい」

先の声が震えた。

「あなたが何を言っても信じてもらえないようにするためです」

私は目を閉じた。

、なぜ自分だけがこんな目に遭ったのかと考えてきた。

答えは、あまりにも勝だった。

私は、学の数字を見ただけだった。

それをたちが恐れた。

そして、歳の子どもを嘘つきにした。

森先は、涙声で言った。

「本当に、申し訳ありませんでした」

私はしばらく黙っていた。

やがて、ゆっくり答えた。

「先。私は、あのからずっと、自分が悪かったのかもしれないとっていました」

先は何も言わなかった。

「でも、今、ようやく分かりました。悪かったのは私じゃなかったんですね」

話を切ると、窓のは夕暮れだった。

私は、の自分へ、何か言ってあげたいとった。

教ので泣いていた、さな女の子へ。

あなたは違っていなかった。

の言うことが、いつも正しいわけではない。

それを、ようやく伝えられる気がした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: