"昭和39年、給食費泥棒にされた少女" 第7話
消えなかった千百円
森先と好さんが再会したのは、ぶりだった。
所は、私の父の自転修理だった。
広い会議よりも、見慣れた所のほうが落ち着くとったからだ。
父はの奥を片づけ、分の子を用してくれた。
森先は、約束のより分く来た。
には、古い呂敷包みを持っていた。
好さんが到着すると、先はすぐにちがった。
「好さん。お久しぶりです」
好さんは静かにうなずいた。
「久枝先。お元気そうで」
は、しばらく言葉を交わさなかった。
私はお茶をし、席に着いた。
森先は呂敷をいた。
には、古い記帳と封筒が入っていた。
「子さん。これは、当の私がいたものです」
私は記を受け取った。
昭。
『杉本より、の件についてしないよう指示あり。岸田子児童が帳簿を見た能性』
その次の。
。
『組費の件、と協議。本に謝罪を求める方針』
さらに。
『岸田児童、謝罪せず。転勧奨について保護者と協議』
私は記を閉じた。
「先は、最初から私が盗んでいないとっていたんですね」
森先はうなずいた。
「はい」
好さんがをいた。
「久枝先。私はあのとき何度も言ったでしょう。子ちゃんは関係ないって」
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「覚えています」
「それなのに、どうして」
森先は、しばらくうつむいていた。
「怖かったんです」
好さんは何も言わなかった。
先は続けた。
「私は、あの学で働き続けたかった。先に逆らえば、次の異や仕事に響するとっていました」
「だから、子ちゃんを犠牲にしたの?」
好さんの声は静かだった。
森先はうなずいた。
「そうです」
私は先を見た。
「それだけですか」
先はし顔をげた。
「どういうですか」
「先が怖かったのは分かります。でも、私を棒にしたあと、先は何度も謝る会があったはずです」
森先は黙った。
「私が転したあとも、の正は続いていました。先は受領に印鑑を押していましたよね」
先はうなずいた。
「はい」
「そのときも、怖かったからですか」
い沈黙のあと、先は言った。
「最初はそうでした。でも、途からは違いました」
私は待った。
「度嘘をつくと、それを認めるのが怖くなったんです。子さんに謝れば、自分が何をしたのか、全部認めなければならないから」
先は記帳を見つめた。
「私は、自分のことしか考えていませんでした」
私は胸の奥が痛くなった。
、先は教で私に謝れと言った。
けれど、謝るべきだったのは先のほうだった。
好さんは、先を見たまま言った。
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「久枝先。私はあなたに、辞めるに度だけ頼んだよね」
森先はうなずいた。
「覚えています」
「子ちゃんが盗んでいないと、みんなので話してほしいって」
「……はい」
「あなたは、もう終わったことだからと言った」
森先は涙を流した。
「本当に申し訳ありませんでした」
好さんは、すぐには答えなかった。
私はのやり取りを聞きながら、のを考えていた。
あのころのたちにも、それぞれの活があった。
仕事があり、族があり、失いたくないものがあった。
でも、そのために歳の子どもを傷つけてよかったことにはならない。
私は森先に尋ねた。
「先。これから、どうしていただけますか」
先は顔をげた。
「私にできることなら、何でもします」
「まず、当の費がなくなっていなかったことを、正式に証言してください」
「はい」
「それから、私を盗んだと決めつけたのは違いだったと、記録に残してください」
先はうなずいた。
「分かりました」
私は、文の記と好さんの記録も机に並べた。
すでに入された費。
架空の未納記録。
実際よりく請求された数。
森先の記。
そして、当の友の証言。
つずつ、事実がつながっていた。
その、私は資料を理して、町の教育委員会へ提した。
森先と好さんも、事を説することに同した。
文も、当の自分の証言について話してくれた。
教育委員会では、まず費の入記録が確認された。
千百円は、に受領されていた。
に同額の現が盗まれたという記録は、ほかの帳簿と致しなかった。
さらに、森先は、私を犯と断定できる証拠がなかったことを認めた。
私は、会議の席で言った。
「、私は教で棒と呼ばれました。謝れば許してもらえると言われましたが、盗んでいなかったので謝れませんでした」
委員たちは静かに聞いていた。
「私は、誰かを罰してほしいわけではありません。ただ、違った記録を残したままにしてほしくないんです」
私は度息をえた。
「私の名を、正しい形で残してください」
数、町の教育委員会は、当の盗難疑惑について訂正の説をした。
『昭に発したとされる組費の紛失について、保資料および関係者の証言を確認した結果、岸田子氏が現を盗んだとする根拠は認められなかった』
さらに、費千百円は、問題のに入済みだったことも記された。
私はその文を受け取ったとき、しばらくけなかった。
、あの教で誰にも信じてもらえなかった。
それが今、正式な記録として認められた。
父は文を読み終えると、鏡をした。
「よかったな、子」
私はうなずいた。
「うん」
父は、を折らずに封筒へ入れた。
「お母さんにも見せよう。あのも、ずっと気にしていたから」
私は、胸の奥がし軽くなった気がした。
しかし、まだ終わりではなかった。
教育委員会は、費の盗難疑惑とは別に、当の学の請求数について調査を始めることになった。
そのため、旧舎の解体も延期された。
私は、ようやく自分の疑いをらすことができた。
だが、好さんが見つけた数字の違いは、まだ説されていない。
あるの夕方、森先から話があった。
「子さん。もうつ、話しておきたいことがあります」
私は受話器を握り直した。
「何でしょう」
「に、あなたが見た箱のことです」
「はい」
「箱のには、関係の帳簿が入っていました。でも、それだけではありません」
私は黙って待った。
森先は続けた。
「杉本は、学へ入ってくるおを、つの帳簿で管理していたんです」
「つの帳簿?」
「表向きのものと、にはせないものです」
私は尋ねた。
「その裏の帳簿は、どこへったんですか」
先はさく息を吐いた。
「私が最に見たときは、先の息子が持っていました」
杉本正彦。
あの、箱を運んでいた。
私は、の姿をい浮かべた。
森先は続けた。
「そして、あの裏帳簿には、の補助だけではない、別のおのきもかれていました」
「別のお?」
「はい。学へ寄付されたおです」
私はわず聞き返した。
「寄付ですか」
「そうです。のたちが、を満にべられない庭の子どもたちのために集めたおでした」
私は言葉を失った。
好さんは、の材がいつもりなかったと言っていた。
それなのに、学には子どもたちを助けるための寄付が集まっていた。
そのおはいったい、どこへ消えたのだろう。
森先は最に言った。
「子さん。杉本先が本当に隠したかったのは、費の千百円ではなかったんです」
そして、い声で続けた。
「寄付をしたのに、今でもこの町で尊敬されている、ある物がいたんです」
私は、その名を聞こうとした。
だが森先は、すぐには答えなかった。
「その方のことを話すには、もう、会っていただきたいがいます」
「誰ですか」
先は答えた。
「昭の、松ノ学へ赴任した、事務職員の男性です」
私は帳をいた。
費の疑いはれた。
けれど、あの学には、まだ私のらない秘密が残っていた。