"昭和39年、給食費泥棒にされた少女" 第5話
分の
「に分ずつ、数が増えているんです」
私は好さんので、種類の納品記録を並べた。
。
実際の納品数は百分。
町への請求は百分。
差は分。
翌も、その翌も、ほとんど同じ数だった。
好さんは鏡をかけ直した。
「そうだよ。毎ぴったりとは限らなかったけど、だいたいそのくらいかった」
「こんなに違えば、誰かが気づきませんか」
「私は気づいた。でも、先は、補助の計算必な数字だと言ったんだ」
「補助?」
私は帳をいた。
当の町では、学の費用の部を公費で補助していた。
その補助は、を提供した児童数に応じて計算される仕組みだった。
好さんによると、学側は実際の数とは別の数を報告していたという。
私は、昭の補助関係資料を探すことにした。
役では調査を控えるよう言われていたため、まず当の制度や資料の保先を調べた。
町の会計資料の部は、併の旧役から引き継がれ、別の倉庫に保されていることが分かった。
私は担当者に事を説し、閲覧が認められた範囲の記録を確認した。
そこには、学の補助額がごとに記載されていた。
の欄で、私はを止めた。
『追加対象数 名』
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補助額は、につき円。
の対象数は。
私はに計算をいた。
。
円。
。
掛ける掛ける。
千百円。
私はその数字を見つめた。
、私が盗んだとされた費と、まったく同じ額だった。
偶然だろうか。
私は別のの帳簿も確認した。
も、も、同じような追加数の記録がある。
ただしだけ、別の帳簿に『現 千百円』という記載があった。
すでに入されていた費を、もう度未納として扱っている。
私を盗難の犯に仕てげた額は、補助の自然な差額と致していた。
私は、そののうちに好さんへ話した。
「千百円という数字、覚えていますか」
「もちろんだよ」
「費だけじゃなく、補助の差額も千百円だったんです」
好さんはしばらく黙った。
「そうかい……」
「好さんは、補助のことをっていましたか」
「詳しい仕組みまではらなかった。でも、学に来ていない子の分まで請求しているのは、おかしいとっていたよ」
私は確認した。
「分のを、本当に作っていた能性はありませんか」
「ないよ。調理した数は毎数えていた。パンも牛乳も、納入された分を確認していたから」
「では、学が嘘の数を報告していたんですね」
「そういうことになるね」
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私は受話器を握り直した。
費はなくなっていなかった。
しかし、学の別の会計には、千百円という自然な額があった。
たちは、そのつを混同させようとしたのではないだろうか。
私がで数字の違いに気づいた直、盗難騒ぎが起こった。
先は私を棒と呼び、私は転させられた。
その結果、誰もの帳簿の自然さを追及しなくなった。
そう考えると、理解できなかった来事が、しずつつながっていく。
だが、まだ証拠がりなかった。
千百円が致していても、それだけでたちが私を陥れたと断定することはできない。
私は、元教員の森久枝さんを訪ねることにした。
所が分かったのは週だった。
森先は、県内の宅に夫と暮らしていた。
話で名乗ると、先はすぐに私をいした。
「岸田子さん?」
「はい」
「……ずいぶん久しぶりですね」
声はを取っていたが、話し方は昔のままだった。
私は直接会いたいと伝えた。
先はし迷ったあと、承した。
翌、私は森先のを訪ねた。
玄関にはの鉢が並び、居にはの作品が飾られていた。
先は歳になっていた。
髪が増え、背もし丸くなっていたが、姿勢はきちんとしていた。
「お茶をどうぞ」
先は湯呑みを置いた。
私は礼を言い、持参した資料をした。
「先。昭の費のことで伺いました」
森先のが止まった。
「まだ、その話を覚えていたんですね」
私は答えた。
「忘れられませんでした」
先はさくため息をついた。
「子どものころの来事は、になれば違って見えるものですよ」
「そうですね。だから、記録を調べました」
私は入済みの帳簿を見せた。
「千百円は、に納められていました」
先はを見つめた。
「古い記録ですから、何かの違いかもしれません」
「現受払簿にも、同じ額が記載されています」
私はもう枚をした。
「先が受領されています」
先は何も言わなかった。
「先。私は、盗んでいなかったんですよね」
い沈黙があった。
やがて、森先はさく言った。
「……そうですね」
私は、すぐには返事ができなかった。
、度も聞くことのできなかった言葉だった。
「では、どうしてあんなことをしたんですか」
先は線を落とした。
「当は、いろいろな事があったんです」
「どんな事ですか」
「子どもには分からない事です」
私は先を見た。
「私はもう歳です。説していただけませんか」
先は黙っていた。
私は補助の資料をした。
「分のが、実際よりく請求されていました」
先の表が変わった。
「それを、どこで……」
「残っていた記録を調べました」
「あなたは、そんなことまで調べているんですか」
先は初めて声をめた。
「その問題は、あなたの費とは関係ありません」
「では、なぜ額が同じなんですか」
先は答えなかった。
私はさらに尋ねた。
「先は、実際に届いていない材の受領へ印鑑を押していましたね」
森先は、私をまっすぐ見た。
その目つきだけは、と変わらなかった。
「岸田さん。学というところは、の先の判断だけでいているわけではありません」
「先の指示だったんですか」
「私は、学を守ろうとしただけです」
「私を棒にしてまで?」
先は顔を背けた。
「もう帰ってください」
私はちがらなかった。
「先。あの、みんなので謝れと言いましたね」
先は黙っていた。
「私は、謝らなかったことを悔したもありました。謝っていれば、友達を失わずに済んだかもしれない。父のに迷惑をかけずに済んだかもしれない」
私は言葉を続けた。
「でも、今、謝らなくてよかったといました」
先は私を見た。
「私は盗んでいなかったんですから」
私は資料を封筒に戻した。
「先が何を守ろうとしたのか、私は最まで調べます」
そう言って帰ろうとすると、森先が呼び止めた。
「子さん」
私は振り返った。
先は、しばらく言葉を探していた。
そして、いがけないことを言った。
「あなたがいなくなれば、全部終わるとっていたんです」
私はそのにち尽くした。
「どういうですか」
先の目に涙が浮かんでいた。
「先から、そう言われました。あなたが転すれば、誰ものことを話さなくなると」
「先は、それを信じたんですか」
「……はい」
私はもう度尋ねた。
「では、費を盗んだという話は、最初から嘘だったんですね」
先は、ようやくうなずいた。
「そうです」
私は胸ので何かがほどけるのをじた。
しかし、次の言葉で、再び息を止めた。
「でも、子さん。私たちが隠そうとしたのは、の補助だけではありません」
先は声を落とした。
「あなたがに見た、あの箱のです」
私は森先を見つめた。
「何が入っていたんですか」
先は答えなかった。
ただ、こう言った。
「本当のことをれば、あなたは杉本先だけでなく、私のことも、もっと許せなくなるといます」