"葬儀3日後、姑に追放された私に亡き夫からの連絡" 第20話
卓の発表会
引っ越しの片付けが段落したそのの夜。 しいダイニングテーブルには、湯気をてる皿のハンバーグと、彩り豊かな温野菜のサラダ、そして炊きたてのご飯が並んでいた。 咲の好物を、直と私のでキッチンに並んで作った、しいでの最初の夕だった。
「いただきます!」 の声がなり、カチャカチャとよいスプーンの音が響く。 ハンバーグを頬張った咲が、目をまん丸にして嘆の声をげた。 「ん〜っ! すっごく美しい! お父さんの作ったソース、最!」 「そうだろう? 隠しに赤ワインとしの醤油を入れるのがコツなんだぞ」 直が誇らしげに胸を張り、私たちは顔を見わせて笑いった。
事が終わり、私が温かい茶を分淹れてテーブルに置いた、咲がおもむろにちがった。 「あ、そうだ! お父さん、約束!」 咲は自へ駆け込むと、冊の使い古された文庫本と、原稿用の束を抱えて戻ってきた。 あの、張へ向かう直に「聞いてほしい」と願っていた、国語の読発表の原稿だった。
咲は咳払いをつして、姿勢を正した。 「それでは、発表を始めます。私が紹介する本は、ミヒャエル・エンデの『モモ』です」
澄んだ、凛とした声がリビングを満たしていく。 棒に奪われた切なを取り戻す女の物語。
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咲は原稿を見つめながら、に振りを交え、に自分の言葉を紡ぎながら、堂々と語り続けた。
『……私たちは、忙しい毎に追われていると、本当に切なの声を聞くを忘れてしまいます。でも、相の目を見て、黙ってを傾けることこそが、本当のなんだと私はいました』
発表が終わった瞬、直の目から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。 直は両を打ち鳴らし、割れんばかりの拍を娘に送った。 「素らしいよ、咲……! 本当に、最の発表だ……!」 咲は照れくさそうに笑い、それから誇らしげに胸を張った。 「先もね、クラスで番良かったって褒めてくれたんだよ!」
私は涙を拭いながら、娘と夫の笑顔を見つめていた。 失われたは、あまりにも過酷で、痛ましいものだった。 の命が奪われ、信じていた肉親の悪に傷つき、私たちは度、すべてを失った。
だが、あのたいの夜があったからこそ、私たちは気づくことができたのだ。 誰かの顔を伺って沈黙を守る平穏など、偽物に過ぎない。 自分の尊厳を守るために声をげ、するのを取って戦うことこそが、本当のを切り拓く唯のなのだと。
窓のを見げると、澄み渡ったの夜空に、無数のが瞬いていた。 い空の向こうで、私たちに真実を教えてくれた誠さんが、穏やかに微笑んでいるような気がした。
「さあ、は曜だ。で、しい本を買いにこうか」 直の言葉に、咲が「く!」とびねる。 温かな笑い声が、しいがの窓から、夜のへと優しく溶けしていった。 もう、私たちの声を奪えるものは、この世のどこにもいなかった。