"母の初盆を禁じた義父が、土地の名義を知った日" 第9話
「許してくれ」と言われても
親族会議から。
浩司がで実へ来た。
事に瀬先から「直接会うなら必ず記録を残してください」と言われていたので、私はスマートフォンをテーブルのへ置いた。
浩司は以より回りさく見えた。
「由美」
「何ですか」
「美穂とは別れる」
私は何も言わなかった。
「子供のことも……まだ本当に俺の子か分からないし」
その言葉を聞いた瞬、最の僅かなさえ消えた。
自分が倫した女性が妊娠しているのに、追い詰められれば今度はその女性まで切り捨てようとする。
「それを私に言って、どうするの?」
「やり直せないか」
私はわず彼を見た。
浩司は本気だった。
「だぞ。俺たち夫婦だったじゃないか」
「そうね」
「親父たちと別にんでもいい。由美が嫌なら、のことも諦める」
「は最初からあなたのものではありません」
「分かってるよ!」
浩司は声を荒げ、すぐに萎んだ。
「悪かった。俺が全部悪かったよ」
「母のおは?」
浩司の顔が止まった。
「……何のことだ」
「美穂さんへの送」
浩司は黙った。
「母のキャッシュカードを預けた期に、座からおがいてる」
「俺は……借りただけだ」
「誰に断って?」
「で返すつもりだった」
「母に?」
浩司は目をそらした。
私は聞いた。
「お母さんが病院で苦しんでいる、そのおを何に使ったの?」
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「美穂が……活に困っていて」
「母も困っていました」
浩司の顔が歪んだ。
「もう分だろ! なら返す!」
「そういう問題じゃない」
私は声をげなかった。
けれど浩司は、私の静かな声の方を怖がっているようだった。
「あなたは、私が番苦しかったに何をしていたの?」
母の葬儀の。
ホテルのラウンジ。
美穂と。
私が弔問客へをげている頃、浩司は別の女と会っていた。
「ごめん……」
「初盆へ帰りたいと言った私に、あなたは何と言った?」
浩司は答えない。
「んだよりきている族を優先しろと言ったわね」
浩司の目から涙が落ちた。
「由美、俺はどうかしてた」
私は初めて、浩司の泣く姿を見た。
昔なら胸が痛んだかもしれない。
でも今は違った。
これは私を失うしみではない。
自分が失うもののきさに気づいたの涙だ。
む。
。
私がしてきた事。
親の世話。
そして、自分を支えてくれていた妻。
それらが全部なくなることが怖いだけだ。
「浩司さん」
私は静かに言った。
「私はあなたを許すかどうかで悩んでいません」
「え?」
「許す、許さない以に、もうあなたと暮らしたくないの」
その言葉を聞いた浩司は、しばらく私を見ていた。
「本当に終わりなのか」
「はい」
「だぞ」
「だから終わらせるんです」
も耐えた。
もう分だった。
「織には……?」
「私から話します」
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浩司はちがった。
玄関へ向かう途、振り返る。
「親父たち、をたらくところがない」
「それも私が考えることではありません」
「たいな」
その言で、私はし笑ってしまった。
「私をから追いしたたちに言われたくありません」
浩司は何も言えなかった。
その夜、娘の織へ話した。
方に嫁いでいる織は、最初しばらく何も言わなかった。
そしてさな声で聞いた。
「お母さん、本当に婚するの?」
「うん」
「よかった」
予していなかった言葉だった。
「……え?」
織は泣いていた。
「私、ずっと言えなかった。お母さんがあので笑ってるの、全部無理してるって分かってた」
私は黙った。
「おばあちゃんがくなってから、特にひどかったでしょう? 私がくと、お父さんもおじいちゃんたちも急に優しくなるから……余計分かった」
「織……」
「私のためにしてたんでしょう?」
その瞬、初めて涙が落ちた。
私は娘を守るために耐えてきたとっていた。
けれど、その娘はずっと私を配していた。
「ごめんね」
私が言うと、織はく否定した。
「謝るのは私。もっとく、お母さん逃げてって言えばよかった」
話越しに、でしばらく泣いた。
そして織が言った。
「お母さん。今度は自分のためにきて」
それは、母が最に言った言葉と同じだった。