"母の初盆を禁じた義父が、土地の名義を知った日" 第5話
初盆のに来た「客」
初盆当の朝、私は半に目を覚ました。
まだは完全にはるくなっていない。
台所へち、母が好きだった煮物を作った。里芋、参、椎茸、蒟蒻。の母が「煮物はめるにが染みるのよ」と教えてくれた通り、めにを止める。
仏壇にはしいを飾った。
「お母さん。今はみんな来てくれるよ」
写真へ向かって話しかける。
議なほどは静かだった。
午頃から、母の妹や従兄弟たちが集まり始めた。
「由美ちゃん、で準備したの?」
叔母が台所へ入ってきた。
「丈夫。この煮物、お母さんのにづいたとう?」
見をした叔母は、目を細めた。
「そっくりよ。お姉ちゃんが作ったみたい」
その言だけで、胸が温かくなった。
しばらくして叔母が声で尋ねた。
「向こうのご族は?」
「から来るそうです」
私はそれだけ答えた。
事を説するつもりはなかった。
今は母のだ。
義実との争いのではない。
ところが、きながのへ止まった。
義父、義母、浩司。
とも喪姿だった。
「いやあ、遅くなりまして」
義父は玄関に入るなり、親戚たちへげさにをげた。
「由美がで初盆をやると言うものですから、配で駆けつけたんですよ。男の嫁ですからね、私たちが見てやらないと」
義母も続ける。
「本当に気が利かない嫁で。
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皆様にはいつもご迷惑をおかけして」
私は黙っていた。
、話で私を脅したたちとはえない。
世体。
それが義父母の最も切なものだった。
親戚のでは、自分たちこそ私を支える派な義両親だと演じる。
浩司だけは様子が違った。
座敷の隅へ座り、私と目をわせようとしない。
私がたいお茶を差しすと、きく肩を震わせた。
「浩司さん」
「な、何だ」
「お茶です」
「ああ……」
が震えている。
私が美穂の妊娠をっているからだ。
午、お坊さんの読経が終わると、親戚たちは縁側や座敷で休み始めた。
その、私は義父が母の兄へ話しているのをにした。
「このも古くなりましたなあ」
「妹が切にしていましたからね」
「実はね、ここをいずれ建て替えようとっているんですよ」
叔父が驚いて私を見る。
「由美ちゃんが?」
義父は何の迷いもなく答えた。
「ええ。由美も私たちとしい世帯宅にみたいと言いましてね」
私はにした盆をく握った。
嘘だった。
私を追いし、美穂を入れる。
それを母の初盆の席で、「親孝」として語っている。
それでも私は反論しなかった。
今だけは母のために耐える。
夕方になると、親戚たちはずつ帰っていった。
最の叔母が私のを握った。
「由美ちゃん。何かあったら話してね」
その目は、何かを察しているようだった。
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玄関が閉まり、に残ったのは私と義父母、浩司だけになった。
その瞬、義父の表が変わった。
ネクタイを緩め、座へどかりと座る。
「さて。邪魔者も帰ったな」
義母も座布団へを崩した。
「全く疲れたわ。こんな古臭いで過ごすなんて」
義父は部を見回した。
「さっき親戚にも話しておいた。これで建て替えの話は既成事実になった」
そして私へを差しした。
「由美。本物の実印との類をせ」
「しません」
義父の顔が険しくなった。
「まだ分からんのか」
「分かっています」
「なら、これに署名しろ」
義父は胸ポケットから枚のを取りし、テーブルへ投げた。
婚届だった。
夫欄にはすでに浩司の署名がある。
「浩司にはしいがある。おは邪魔なんだ」
義母が吐き捨てた。
「若くて素直で、それに今度こそ男の子がまれるかもしれないのよ」
私は浩司を見た。
浩司は俯いたままだった。
助けを求めても、謝罪を求めてもいない。
ただ逃げている。
と同じだった。
「しい相というのは、美穂さんですね」
私が言った瞬、義父母の顔から笑みが消えた。
浩司が真っ青になった。
「なぜ……」
義父がちがる。
「っているなら話がい! さっさと権利をせ!」
そして義父は母の箪笥をけ始めた。
義母も押し入れを漁る。
アルバムや裁縫箱が畳へ投げされる。
「やめてください!」
私が止めると、義父は腕を振り払った。
私は畳へ倒れた。
「どうせこのは壊すんだ! には全部ゴミだ!」
母の写真がへ落ちた。
学の私と母が並んで笑っている写真だった。
私はそれを拾った。
そのだった。
玄関ので、が止まる音がした。
続いて、呼び鈴が鳴った。
義父が苛った顔で振り返った。
「今度は誰だ!」
私はちがった。
実は、昨のうちにあるへ連絡していた。
今、もし義父たちが実へ押しかけ、類を奪おうとしたのために。
玄関をける。
そこにっていた物を見た瞬、義父の顔から初めて完全に血の気が引いた。
そしてそのは、義父へ向かって静かに言った。
「森田正雄さん。これ以、勝に探さない方がいいですよ」
私の反撃は、ここから本当に始まった。