"雨宮停留所の黄色い傘" 第6話
運転の沈黙
塚は、私が見たの話を聞いても驚かなかった。彼自も、ののバスの窓にが映ることがあると言った。ただ、彼は度も声をかけたことがない。声をかければ、あの夜の自分のを認めることになるからだと話した。
「私は信夫くんをでろしたあと、追いかけませんでした。彼が母親の姉のへくと言ったので、そこなら全だとった。けれど、本当は確かめるべきだった」
「そのお姉さんのに着いたんですか」
「分かりません。翌朝、姉のは空きになっていた。彼女はのに町をていたんです」
つまり信夫は、く所を失っていた。塚は町営バスの最終便で、彼を駅まで送り直した。駅で切符を買うを渡したが、先は聞かなかった。信夫は「へく」とだけ言った。
「なぜ、それを警察に話さなかったんですか」
「ご主が、佐子さんので私を責めたんです。『息子をそそのかした』と。私は規則違反をしていた。自分の職を守りたかった。だから、何もらないふりをした」
彼は、運誌のページを破ったのも自分だと打ちけた。信夫を乗せたことがるみにれば、族に連れ戻されるとったのだ。彼はを守ったつもりだったが、佐子さんから息子の所をるがかりを奪ってしまった。
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塚は、信夫がへ渡ったかどうか確かめる方法を探していた。古いバス会社の職員名簿に、同じ名字のが残っているかもしれない。私は役所の資料と、当の同級の名簿を照らしわせた。はかかったが、信夫の学代の友が、今も町にんでいると分かった。
友の岸さんは、信夫が発するに自分へ話をかけてきたと話した。
「信夫は、母親を連れていくと言っていた。でも、母親が父親のそばをれなかった。あいつは、母親が来るまで待とうとしたんだ」
「それで、帰らなかったんですか」
「度だけ、母親に話をした。父親がて、もう度とかけるなと言われた。それからはにしたらしい」
私は、彼の話を録音する許を得た。佐子さんへ事実を伝えるとき、記憶の違いをつずつ確かめる必があるとったからだ。
岸さんは、最にこう付け加えた。
「信夫がをたのは、父親から逃げたかったからだけじゃない。母親が自分のためにきてくれるか、確かめたかったんだとう」
そのの夕方、施設の職員から連絡があった。佐子さんがまた施設を抜けし、宮留所へ向かったという。
私は塚とで急いだ。
留所には、佐子さんと、黄い傘を持つが並んでっていた。
塚はブレーキを踏み、顔を張らせた。
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「信夫くん……」
は、と同じ顔で、彼を見た。
塚は、運転を辞めてからも何度か宮留所に来ていた。町のに見られないよう、暗くなってからベンチのに傘を置いて帰ることもあったという。彼は、信夫が戻ってくるかもしれないと考えていたが、佐子さんのに現れる資格がないとっていた。
「私が隠したせいで、あのは息子を待ち続けた。今さら謝っても、取り返せません」
「謝ることは、取り返すためだけにするものではないといます」
彼は返事をしなかった。
私は塚の古い運転帳を見せてもらった。運誌のような正式な記録ではなく、勤務と距をき留める個の帳だった。昭には、距が通常よりキロい。欄には「まで。駅まで戻る」とある。
帳は塚自がいたものだった。彼は、信夫を駅まで送ったあと、帰りにもう度留所へ戻っている。なぜ戻ったのか、彼は覚えていないと言った。
塚は、当の同僚の娘に連絡を取り、父親が残した鍵のことを尋ねた。彼女は、父親が退職に「信夫くんに傘を返せなかった」と何度も話していたと教えてくれた。
その運転は、信夫が駅でりたあと、を留所へ戻した。黄い傘がベンチに残っているのを見つけ、庫へ持ち帰った。
塚が記録を隠すのを伝い、傘を返す会を探していたが、信夫が戻らないままが過ぎた。
「彼も、ずっと悔していたんですね」
「そうです。私だけが隠したのではない。皆がしずつ、自分の都で黙っていた」
塚は鍵を握りしめた。彼は庫の鍵だとっていたが、実際は古いバスの忘れ物箱の鍵だった。町の倉庫に、まだ箱が残されているかもしれない。
倉庫の忘れ物箱は、何もけられていなかった。には片方だけの袋、定期入れ、子どもの筒が残っていた。塚は箱の奥で、黄い傘の留め具を見つけた。傘そのものはない。裏にさく「S」と刻まれていた。信夫の文字ではなく、佐子さんの名だった。
塚は、忘れ物箱の鍵を役所へ返すに、箱のをつずつ記録した。彼がに黙ったことで、信夫は母に会えず、佐子さんは帰りを待ち続けた。彼は「遅くなりました」と、箱に向かってをげた。私はそのにいたが、返事の声は聞こえなかった。
箱の鍵は、返すに塚が度だけので温めていた。
塚は、そのも毎度、施設へ謝りに通った。