"「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知" 第11話
全国の演壇と真実の言葉
翌朝の京都国際会館。
ガラス張りの巨なメインアリーナには、はからは州に至るまで、区予選を勝ち抜いた精鋭チームが集結していた。各学の応援団や産学連携企業のスカウト陣、学会の理事たちがひしめきい、会全体が異様な気に包まれている。
俺たちの都科学チームの登壇順は、午のセッションの番目だった。
控で最終確認のプログラムをらせていたとき、ふとホワイエの型スクリーンに目をやると、客席の最列の端に、昨と同じトレンチコートを着た彩佳の姿がさく映り込んでいた。
まだ帰っていなかったのか。しかし、議なほどは乱れなかった。彼女がどこで何を見ていようと、俺がつべき所と、成し遂げるべき目標には何の響もない。
「次、都科学チーム。登壇準備をお願いします」
アナウンスが響き、俺はスーツの胸元を正してちがった。黒田教授が、力く俺の肩を叩いて送りしてくれた。
「瀬君、いつも通りやりなさい。真実は、君が積みげたデータのにすべてある」
「はい!」
ステージにがると、無数のスポットライトが界をく染めた。千を超える聴衆の線が、演壇の央につ俺へと斉に注がれる。
俺はマイクを両で握り、静かに息を吸い込んでをいた。
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「都科学、報学部の瀬優馬です。本は、都部の規模交通網における突発事象耐性を備えた『分散協調型ルーティング・アルゴリズム』の実証成果について報告いたします」
スライドが切り替わり、複雑な数式とネットワークグラフがスクリーンに展される。
声は震えなかった。代のあの暗い自で、誰にも邪魔されずに没していたシミュレーションの記憶。学に入ってから、黒田教授や先輩たちと朝まで議論を戦わせ、ずつき換えてきた臭いコードの連なり。そのすべてが、今の俺の背を揺るぎない力で支えていた。
「本モデルの革性は、従来の央集権なサーバー処理を排し、各交差点の通信ノードが局所な渋滞波の伝播を自律に打ち消しう点にあります。これにより、サーバーダウンにおいても全体の交通流の約パーセントを維持することが能となりました」
制限の分、俺は切原稿を見ることなく、自らの考のすべてを論理な言葉へと変換し続けた。
そして、最の関である質疑応答が始まった。
審査員席の最列でマイクを取ったのは、報処理学会の会を務める著名な名誉教授だった。
「瀬君、非常に完成度のい発表だ。だが、つ根本な疑問がある。
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このモデルは局所な最適化を優先するあまり、広域ネットワーク全体でのパレート効率性を損なうリスクを内包しているのではないかね? 特定のエッジノードに過剰な負荷が集した際、システム全体が連鎖に崩壊する『カスケード故障』の能性について、どう検証しているのかね?」
会全体が静まり返った。まさに、この理論の最も急所を突く、容赦のない技術質問だった。
客席の先輩たちが息を呑むのが分かった。
俺は瞬だけ目を伏せ、それから顔をげてマイクに向かった。
「ご指摘の通りです」
俺の声は、瞭にアリーナ全体へ響き渡った。
「現のプロトタイプでは、トラフィックの流入量が理論限のパーセントを超えた際、局所なバッファオーバーフローが隣接ノードへ連鎖し、最で広域の割に遅延が波及する脆性を確認しております」
会にどよめきがった。自らの点を、これほどあっさりと認める発表者は稀だったからだ。
しかし、俺はじることなく、元のポインタで次のバックアップスライドを表示させた。
「しかし、その崩壊を防ぐため、々は物の粘菌ネットワークから着を得たな容量再配分アルゴリズムを追実験にて実装いたしました。これにより、過負荷ノードをにトポロジーから隔し、迂回を自成することで、カスケード故障の発確率を従来の分の以に抑制できる見通しを得ております」
点を隠さず、未完成であることを恐れず、真理の先にある解決策を堂々と提示する。
質問した学会は、鏡の奥の目を丸くし、それから満そうにく頷いてマイクを置いた。
「見事だ。自分の理論の限界を正確に把握し、その先を見据えている。素らしい研究態度だ」
拍が、波のように客席から広がり、やがてアリーナ全体を包み込む万の轟音となった。
演壇をりる際、俺の取りは驚くほど軽やかだった。
客席の最列を見げると、そこにはち尽くしたまま、両で元を押さえて呆然とち尽くす彩佳の姿があった。
彼女は今、理解したはずだ。
自分が代に「暗い作業」「面倒な計算」と見していた俺の努力が、どれほどのみへ到達していたのかを。そして、自分がその努力の価値を何つ理解していなかったという酷な事実を。
俺は度も彼女の顔を見ることなく、笑顔で駆け寄ってくるチームメイトたちの輪へとび込んでいった。