"「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知" 第8話
台裏の亀裂
表彰式が終わり、関係者や学たちで溢れかえるメインホールの付は、祝福の声と記撮のフラッシュで華やいでいた。賞状とみのあるガラスのトロフィーを抱えた先輩たちに囲まれながら、俺は関係企業からの挨拶や名刺交換に応じていた。
「瀬君、君の設計した処理ルーチン、うちの研究所のデータセットでも試してみたいね。で連絡先を教えてくれるかい?」
通信キャリアの研究所からそう声をかけられ、をげて連絡先を交換したとき、ふと混みの隙から、しれた柱ので言い争う男女の声が聞こえてきた。
見覚えのある横顔だった。神怜と、希彩佳だった。
「……だから言っただろ、希さん。あの数式の論理構成を自分の言葉で説できないなら、事に俺に相談してくれって」
神の声はく、りを通り越してえ切っていた。いつものスマートで温な態度は完全に消え失せ、元のバインダーで資料の束をトントンと揃えている。
「で、でも……参考には確かにあの平均値代入でいいっていてあったし……怜君だって、に『これでいこう』って言ったじゃない!」
彩佳は目に涙を溜め、すがるように神の腕を掴もうとした。しかし、神は歩ずさり、そのをややかにかわした。
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「俺は君がちゃんとシミュレーションの挙を確認したで『問題ない』と言ったから信じたんだよ。まさか、の数式がどう作用するかも分からずに、適当に数値を埋めていただけだとはわなかった。今の審査員の質問、君は言も論理な反論ができなかったじゃないか」
「そんなの……あんな悪な質問されるなんてわなかったんだもん! のときは、優馬が全部穴埋めしてくれて、先にも褒められてたのに……!」
わずからびしたのであろうその名に、神はあからさまに呆れたような息を吐きした。
「また瀬君の話か。……いいかい、希さん。君が代にどうやって成績を保っていたのかはらないけれど、ここはの善にただ乗りして評価だけを掠め取る所じゃないんだよ。自分ので考えず、の成果を自分のものだと錯覚していると、これ以緒に研究を続けることはできない」
「え……? 怜君、それどういうこと……?」
「次のの学会発表のプロジェクトから、君をす。メンバーの再編成は今に教授に報告しておくから、君はもうデータサーバーにアクセスしなくていい」
「待ってよ、怜君! 私、反省するから! 次はちゃんとやるから!」
彩佳の痛な叫びを背に、神は度も振り返ることなく、でへ向かって歩きっていった。
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取り残された彩佳は、ハイヒールのままそのにへたり込みそうになり、慌てて壁にをついた。巻き髪は乱れ、コンテストのために調したであろう等なブラウスの胸元が、激しい呼吸で波打っている。
その線が、混みの向こうにっていた俺と、かちった。
彩佳の瞳に、激しい揺と、すがるようなが瞬宿った。彼女が何かを言おうとをき、こちらへ歩踏みそうとしたその、俺は静かに線を逸らし、佐藤先輩の方へと向き直った。
「瀬、どうした? りいか?」
「いえ、何でもありません。……先輩、この教授たちと打ちげですよね。くきましょう」
「お、そうだな! 黒田先が美い肉奢ってくれるって張り切ってたぞ!」
俺たちの笑い声にかき消されるようにして、背から微かにすすり泣く声が聞こえたが、俺のが止まることは度となかった。のにしがみつくことでしか歩けないのためにち止まるほど、俺のはくはなかった。